第10話 診察中、竜将軍が色っぽすぎて理性が限界です

「……服は?」

「人間のものは、持っていない。装備は脱いだら溶けた」

「おい」

 

おっちょこちょいか、おまえは。


俺が呆れていると、ラナが慌てて駆け出していく。

「ちょっと待って、毛布、毛布!」


数分後、戻ってきた彼女が差し出した毛布を、

アスリナは無言で受け取り、肩までくるまった。

全裸で堂々と立っていたときの威圧感は、どこへやら。


「……老い、などと……言われたのは、初めてだった……」


毛布にくるまったまま、アスリナはぽつりと漏らした。

しょんぼりと肩を落としたその姿は、少しかわいい。


「いくつなんだ?」

 俺が尋ねると、アスリナは少しだけ目を伏せて答えた。


「百三十……」


「それは確かにかわいそうかも!」


人間にして二十歳ほどか。

ラナがすかさず声を上げる。


「うちのばあちゃん、人間で七十歳くらいだけど、まだまだ現役よ?」


──それはそれでどうなんだ、と思いつつ、ツッコミは飲み込む。


「竜族としては、まだ若いな」


俺がそう言うと、アスリナは毛布を巻いたまま、小さくうなずいた。


「……だが、最近、調子が悪い。背が重く、眠っても疲れが抜けん」

「熱は?」

「ない。ただ……魔力の流れが乱れる。制御しきれず、指先までしびれることがある」

「……少し触れるぞ」

「……ああ」


毛布の隙間から、そっと指先を差し入れる。

なめらかな肌に触れた瞬間、アスリナの肩が小さく跳ねた。


甘く、鼻にかかった声が耳に届く。


「はあんっ……!」


(……今の、何だ?)


思わず目を逸らしかける。


(……敏感だな)


指先に伝わる熱。

思ったよりずっと柔らかくて、艶があって──


(てか、色っぽいな)

(いやいや、俺は医者。白衣の理性……)

(白衣を脱いだら、ただの男か──いや、脱がんぞ、俺は)


「……診察だ」

「ふーん?」


横を見ると、ラナが腕を組んでにらんでいた。

ほんのり甘い匂いが鼻をかすめ、さらに思考をかき乱す。

感情が揺れると、彼女の魔力香は自然と強くなる。


……だから、違うって。

本当にかんべんしてくれ。


けれど、竜族の身体構造は、人間とはまるで違う。

俺の知識だけでは、正確な判断がつかない。


「どうだ?」

「少し調べさせてもらってもいいか?

古い資料や魔族の文献を見れば、何かわかるかもしれない」


アスリナはこくりと小さくうなずいた。


「時間がかかりそうか」

「そうだな、明日には」

「泊まるってこと?」


唐突に、ラナが声を上げた。


「わ、私というものがありながら!?  浮気!?!?」

「いや、違うだろ」  


魔力香が、耐えられないくらい強くなっている。

俺は深くため息をついた。


その夜。

薬草を煎じる匂いが室内に漂うなか、診療所の扉が静かにノックされた。


***


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https://kakuyomu.jp/works/16818792435685695540


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