4話:威風堂々・サリエル
トレシアと俺は入り口から少し森の奥に進んだ。
そこで俺は聞き覚えのある声を耳にする。
「ん?この声・・・」
声の方に少し進むと、そこには人影があった。
「混沌よりいでし我の名は!フェネクス・ド・サリエル!魔王軍屈指の四天王の一人!王都と我らが境界を越え、のこのことやってきた伝説の勇者よ!其方の力、我には及ばぬ!・・・うーん、なんか違う・・・」
そこにいた人物は、黒い軍服のようなものを着て、頭には大きなツノが生えていて、耳も尖っている高校生くらいの青年だった。
「おっ!サリエルじゃ〜ん!今日はこんなところで練習?」
「なっ!?お、お前!どこから現れた!?いつからそこに!?」
「今来たばっかりだけど、割と遠くからサリエルの声耳に入ってたよ?」
「そ、そうなのか・・・」
トレシアと話をしているその人物は、顔と耳を赤らめながら恥ずかしそうにしていた。
その人物は、俺にとって初対面ではなく、長い付き合いのように感じ、試しにその名を呼ぶ。
「お前・・・斎藤か?」
「ん?我の名はフェネクス・ド・サリエル!魔王軍屈指の四天王の一人!故にお前のその人物とは別人だ」
「そ、そうか・・・」
俺はもう、正直諦めかけている。
こいつといい、トレシアといい、ましてや初めの皇帝まで、顔と喋り方が同じなのに名前と身分が違い、本人は「別人だ」と主張するこの状況。
俺には違和感しかない。
「ところで、其方は伝説の勇者だろうか?」
「え、なんで知ってるんだ?」
「トレシアは魔王様から告げられていた、伝説の勇者を呼び寄せろ・・・と」
「えっと・・・なんて?」
サリエルと名乗る人物の言葉遣いが言語が同じなはずなのになぜかわからない。
俺の知ってる斎藤もこんな感じだが、双方言葉遣いが随分と個性的だ。
「サリエルは、魔王様があたしに君を連れてこいって言われてたのを見てたからって言ってるよ〜」
「よくわかるな・・・そもそも、なんで俺は呼ばれたんだ?」
「この世界はもはや運命にして崩壊の刻が迫る!その運命を振り払うためには、伝説に謳われし勇者の姿こそが鍵となるのだろう」
「サリエルは、この世界はもうすぐ崩壊する、その運命を変えるには伝説の勇者が必要だって言ってるよ〜」
「なるほど、だから俺は魔王に呼ばれたんだな?」
会話の途中で『俺って色々と結構責任重大すぎないか?』と俺は思ったが、詳しいことがわかるまではその可能性を無視することにした。
なぜかと言うと、それは俺がプレッシャーに弱いからだ。
「其方が伝説の勇者・・・だが、我は其方が強き者だとは思えぬ、ゆえに認めぬ!」
「・・・は?」
「サリエルは、お前が強いとは思えない、だから認めない!って言ってるよ〜」
「それはわかったけど・・・じゃあどうすればいいんだ?」
「遠くより来たる伝説の勇者よ!我が魂を刺激を与えよ!」
うん、相変わらず何言ってるかわからない。
かっこいいセリフを毎回思いつく厨二病はすごいと、俺は思った。
「サリエルは、何か面白いことを我に言え!って言ってるよ〜」
「お、面白いこと・・・?」
「其方の面白さを我が見極めてやろう」
「え、えぇ・・・?」
どうしよう、実に困った。
僕は昔からバカ真面目、面白さなんて皆無だ。
だが今ここで面白いことを言わないと、きっと魔王城まで辿り着けない。
「・・・ちょ、朝食抜いて超ショックー!!!」
「・・・・・・」
「・・・どゆこと?」
トレシアとサリエルはキョトンとした顔で静止している。
終わった、完全に滑った。
なんで俺は異世界に来てまでギャグを言って滑らなければならないんだ。
俺何も悪いことしてないのに・・・と思っていたその時。
「・・・あっ!そゆこと!?朝食と超ショックをかけてるんだ!」
「朝食抜いて超ショック・・・か。なかなか面白い・・・其方、やるな」
「そ、そうか・・・」
意外とウケた。正直こんな俺の親父が言ってた親父ギャグが受けるとは思わなかった。
「我の心に響いた、其方を許すとしよう」
こうして俺はサリエルに認められた。
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