未来に向かって

 彼女は話し終えると、とても晴れやかな表情をしていた。シロの死を乗り越え、新しい扉を開いたのかもしれない。


 彼女の話の中で、少年が言っていた言葉・・・・・・


 〝お姉さん、これから、いい事はまだまだあるよ〟


 これは、彼女への未来の暗示だったのかもしれない。


「清水さん、本当に不思議な話でしたね・・・・・・そして、良い話しでした。しかし、絶対に自ら命を絶つような事はしないと約束して下さい」


 私は強い口調で彼女に言葉をかける・・・・・・死んでしまってはどうにもならない。


「シロが生かしてくれたこの命を大事にします。そんな事は絶対にしません・・・・・・シロを悲しませる事になるから」


 彼女はシロの写真を取り出し、じっと眺めた。彼女には常にシロが付いてくれているだろう・・・・・・


「先生、本当にありがとうございます。私、立派な獣医になります」


 彼女は力強く私に言った。彼女の表情はとても晴れやかだった。


「応援していますよ」


 彼女は頭を下げ、席を立ち、相談室を後にした・・・・・・その後ろ姿には、沈んでいた私の心にも光を与えてくれてるようだった。











  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る