第2章 窓の夢
相談者 栗田ちひろ
前回の佐藤ゆかさんの事件は、校内で大きな噂になっている。退屈な学校生活にとって、十分過ぎるスパイスとなってしまっていた。
いたずらにありもしない噂を流す生徒も見受けられる。女子高校生にとって噂話しは大きな娯楽の一つだ。
噂は更に噂を広げる。止めることなんて出来ない、時間が過ぎるのを待つしか無いだろう・・・・・・
彼女の苦悩を聞いていた私の胸は痛んだ。結果的に彼女は屋上から飛び降りたのだ。
救えなかったことは事実であり、私は酷く落ち込んだ。彼女が視界から消え、地面に叩きつけたあの鈍い音が頭から離れない。
もっと良い結果になったのかもしれない・・・・・・考えだしたらきりが無い。
しかし気分を引きずっていたら相談役は務まらない。生徒の悩みを聞き、より良い方向に導くのが私の仕事だ。
相談役が弱っていたら生徒も相談なんて出来るはずが無い。
さぁ、切り替えよう・・・・・・
気持ちを切り替えたその時に、扉を叩く音が相談室に響いた。私が返事をすると扉が勢いよく開いた。
次の相談者は栗田ちひろさんだ。彼女はとても、堂々していて自信がみなぎっている印象を受けた。
「こんにちは、よく来てくれましたね」
彼女は頭を下げると、まっすぐな視線で私を見る。
「初めまして、二年の栗田ちひろです。よろしくお願いします」
第一印象通り、堂々としていて、はっきりとした自己紹介だった。おそらく、優秀な生徒だろう。彼女は一体どんな悩みを抱えているのだろうか・・・・・・
「ちひろさん、初めまして、どうぞ椅子に座って下さい。飲み物でもどうですか?ミルクティーとコーヒーがありますが」
「ありがとうございます。コーヒーを頂けますか?」
私はコーヒーを机の上に置くと、いくつかの雑談を始める。彼女ははっきりとした受け答えをしていて、とても悩みがあるようには思えなかった。
喋りも上手く、会話に困る事も無い、十分程の雑談をした後に、彼女は悩みを話し始めた。
「先生・・・・・・私、とても奇妙な夢を見るんです・・・・・・」
奇妙な夢?やはり、思春期の女の子だ。どのような悩みかと構えてしまったが、奇妙な夢と言うありがちな悩みだと聞いた時に一瞬ホッとしてしまう。
この年代の女性は悩みが尽きない、勉教、家庭、人間関係、将来、恋愛、その時々に考えている事が夢に直結し出てくるのはよくある事だ。
しかし、彼女の表情は真剣そのものだ。私は彼女の話しに耳を傾けた。その夢はとても奇妙な夢だった・・・・・・
「その夢は・・・・・・」
彼女は話し始める・・・・・・
※ 以降、ヒアリングした話しを考察を交えて、彼女視点で調書に記す。
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