ぼくのこども 彼女の姉と弟


ぼくには3人子供がいる。

彼女と、彼女の姉と弟。

彼女はよわよわのほやほやだったけど、姉と弟は五体満足、賢く、天真爛漫、風の子、げんきなこどもそのものだ。

僕達夫婦のもとに生まれてきてくれただけで百億満点の偉大な存在だ。

これはもちろん彼女にも僕達夫婦のもとに生まれてきてくれただけで百億満点は追加されているからご安心を。


ぼくは姉と弟の健常っぷり、元気っぷりをひたすら褒める。それ以上に尊いことはない。だって産まれたそばからどんな些細なことも自分で考え、行動し、失敗し、学んで、どんどん進化できる。当たり前なのだろうけどこれってすごい。

動物と違ってすぐ歩けなくて貧弱な人間さまは脳みそがものすごい勢いで学んでいく。それはそれは目まぐるしく觀ていて飽きないしどんどんサポートしたくなる。

この可愛らしくも力強く身も心も成長していく尊い存在を褒めずにおれようか。


同時に彼女の貧弱ながらも奥底からふつふつしていそうな絶妙な力強いいのちも褒めまくった。

姉と弟の元気さは尊い。それ以上に彼女が彼女として生きるためのハンデをたくさん抱えながらも家で一緒に過ごせることのすごさといったら!

もちろん健常児にはないサポートが山程必要ではあるから看護する身としてはとても大変すぎるほど大変。(だったらしい。彼女を亡くし、入院してから気がついた。)


栄養は口からの飲食はできなかったから、すべて鼻から胃につながる管から入れるのでご飯代わりの栄養剤をスペシャルな配合で体調を見ながら量を調整できるポンプを使って注入する。

1日三回。赤ちゃんのときは8回だったから最近はちょっと楽だった。それでも毎回洗って消毒してってのは結構な手手間だ。

あとここ数年は心臓の穴が悪さをして肺がつまりつつあって、呼吸も大変になっていたから鼻から酸素を吸うものもつけていた。

彼女はチューブを引っ張ったり噛んだりして遊ぶのが好きだったら、いつも酸素のチューブはブンブン振り回したり噛みちぎったりしてすっかり彼女のおもちゃになっていた。

こちらとしては酸素が漏れてしまうんじゃないかと気が気ではなくてハラハラしていたけど、楽しそうな顔を見ちゃったら思いっきり楽しんで欲しくなっちゃうよね。


ブンブンも噛みちぎりも褒めまくったよ。だって彼女の意志で体を動かして楽しんでるんだ。こんなにすごいことってある?


姉と弟ももちろんタイプは違う。

女の子と男の子だし、姉は彼女が生まれてからとてもイレギュラーな日々が続いて寂しい思いもたくさんさせたと思う。

姉は当時2歳で、毎日のように行っていたお散歩やおでかけは極端に減ったし、僕は毎日NICUへ行っていたからその度に祖母の家に預けられた。

赤ちゃんの頃から交流のあったおともだちと幼稚園へと思っていたけどぼくがみごとにポンコツを発揮して誰も知らない保育園へポコンと入ることになった。

お役所でパニックを起こしたぼくをなだめて保育園へ繋いでくれた職員さんと受け入れてくれた保育園には頭が上がらない。お役所さんは優しい人がはたらいている。


彼女の入院もちょこちょこあったからその度にぼくは付き添いで入院が必要になり家を空けざるを得なかった。

たまたま姉も一緒に体調が悪いときは彼女の主治医さんの計らいで一緒に入院させてもらえたけど、お父さんとお留守番生活はふたりとも大変だったと思う。

ふたりともとてもがんばってくれた。

これはぼくが言うのはおかしいかもしれないけど、思春期を迎えつつある姉がお父さんにべったり甘えていたり信頼しきっている関係があるのはこのときのおかげだと思う。二人の頑張りはもちろんだけど、彼女の功績は偉大なのだ。にやり。

姉は賢く健康で、心やさしい素敵な女の子である。完璧すぎやしないか。ポンコツが鷹を産んだんだ。すごいぞぼく。


弟は元気いっぱい天真爛漫だ。

子供は風の子元気な子!お勉強も遊びもだいすき!みたいな。

もちろん産まれたときから「彼女の在宅看護かつ入院いっぱい生活」なので全てそれが『普通』の環境で育ってきてくれたのだけど、幼稚園とか社会とのつながりが出たときのギャップには驚くことが多かったんじゃないかとおもう。

授乳期間が終わるまでは彼女の入院の度に一緒に入院させてもらっていたからむちゃくちゃ元気な入院患者生活を何回もしていた。

入院中の彼の日課は病室の前を通る人全員にあいさつをすることだった。

おかげもあってか他の入院患者のお姉さんや看護師さんたちにずいぶん可愛がってもらったし、彼は今でも家の前を通る人みんなに挨拶をするから近所の人にも可愛がられている。これがコミュ力か!と人見知りなぼくは毎回驚かされている。

小学生になってスーパーカー(自転車)を手に入れた彼は自由を手に入れて持ち前のコミュ力を発揮し、学年関係なくいろんな人に仲良くしてもらっている。

トラブルは付き物だけど、学校の先生にもお相手の方にも恵まれてるからその度に仲良しが増えていく感じだ。

なにそれすごい。

彼女の入院が生み出したコミュ力ボーイ。

彼女の功績は偉大。

そしてポンコツが再び鷹を産みました。かみさまありがとうございます。

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