ふてぶてしく生きたカメ
Sケープ
第1話 ふてぶてしく生きたカメ
うちで3匹のカメを飼っていたのだが、最近、一番長く飼っていたカメが死んだ。25年以上も家にいた『カメキチ』と名付けられたカメだ。僕は一人暮らしで離ればなれになった時期があるものの、それでも20年以上は一緒にいたことになるだろう。あまりに一緒にいた期間が長過ぎて、今でも生きている感じがしてしまうほどだ。
最近は動きや反応が衰え、食欲もなく、亡くなる前日は目を開けた状態で呼吸も浅く、危ないかなとは思ったが、それでも長く生きてきたので亡くなるとはあまり思っていなかった。とはいえ、死に顔は安らかな寝顔のようだった。というより、本当に寝ながら旅立ったのだろう。
さて、カメという生き物は、とても賢くかわいい生き物だ。たぶん、一般的知識として皆さんはその賢さやかわいさを、ほんの一部しか知らないことと思う。このまま記憶が薄れてしまうのはあまりに惜しく悲しいので、カメキチが生きた証を、カメという生き物の賢さやかわいさを、何話かにわけて少しずつ書き綴っていこうと思う。
都合上、話が前後したり、他のカメにも当てはまる話が混ざったり、時系列などをボカしたりはあると思う。その点はご容赦を。
◇◇◇
『カメキチ』がうちに来たのは1999年7月のことだ。そう、最近の人はあまりなじみがないかもしれないが、ノストラダムスの大予言のまさにその時だ。出会いは突然だった。
北海道にしてはクソ暑い夏、僕が学校から帰ると、もうカメがいた。たしか水槽に入れられていたと思う。母が外から拾って来たのだという。暑い中、手足と首を引っ込めて歩道にいたのだと。そのままだと干からびるか、車にひかれるかして死んでしまうので、拾ってきたのだと。正直僕は「何を考えてるのだ」と思った。犬猫ならともかく、死にそうだったからってカメを拾ってくるという発想は訳がわからなかったから。
最初は飼うつもりはなく、もしかしたら飼い亀かもしれないし、あるいは動物園などで引き取ってくれるかもしれないということで、母は動いていた。しかし、飼い主や引き取り手は見つからず、その状態で警察に預けるなら処分される旨を伝えられ、結局飼うことにしたようだ。カメを拾ってくるばかりか飼うなんて。
水槽に入れられたそのカメはずっと出ようとして暴れていた。普通の感覚なら「そういうもんだ」と思ったかもしれない。しかし母は「出たがっている、かわいそうだ」と思い。うちに来て1週間~2週間ほどだろうか、結局は水槽から出してあげることにした。朝だけ水分補給と食事を兼ねて水槽に入れてあげるスタイル。座敷亀。うちの中での放し飼いだ。母はカメ用に自作のおむつまで考えてあてがっていた。
そのカメに「カメキチ」という名をつけたのは僕の弟だったような気がする。名付け親は僕でも母でもなかったと思う。平凡過ぎると思ったが、一番覚えやすくカメらしい、結果的にみんなに親しみを持ってもらえるいい名前だったと思う。
うちに来た時は警戒心からだろう、目がとても小さい点だった。動きもビクビクしていた。常に警戒して疲れてしまうからだろうか、すぐにベッドの下という比較的安心できる場所を見つけ、そこで寝るようになった。まだその時は、カメキチとこんなに長い付き合いになるとは思わなかったし、カメがこんなに賢くかわいい生き物だと思っていなかった。その話はまた次回から少しずつ、少しずつ。
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