第27話 森羅同盟国からの使者



 リュウ達が戦場を出て2日が経った。

「もうすぐだ、みんな頑張れ」リュウが全員を鼓舞する。

「ううっ」ペン汰は、うなされたまま目を覚さない。

「今日の薬は飲ませたのか?」とリュウ。

「はい、飲ませてあります」とレイン。


 しばらくするとアズリスが見える。

「よし、もうつくぞ。まず屯所にペン汰を寝かせよう」首都が見えて、リュウ達の足が軽くなる。


 

その頃ルイ達は、セツ案内のもと首都観光をしていた。


「今日は、日が落ちますので、このぐらいにしておきましょう。明日には氷丸の準備が出来そうですので」とセツの部下が話す。

「そうですか、早く準備して頂きありがとうございます。もう少し観光したかったですが」と少し残念そうなルイ。



「そこをどいてくれ!通してくれ」とリュウ達が通りかかる。


「なんだ、騒がしい」とセツ。

「ん、セツか…」リュウがセツを見る。


「すまん。通してくれ。病人なんだ」リュウは通り抜けようとする。


 チラッとセツがペン汰をみる。

「戦で怪我でもしたのか」とセツ。

ルイも覗き込む。

「これは…」ルイが驚いた顔をしている。


「なんだ!フクロウ属か?それにしては、でかいな」リュウが尋ねる。


「はい、申し遅れました。森羅同盟国からきました。ルイと申します。フクロウ属でも大型なワシミミ系種です」ルイは、笑顔で挨拶をする。


「……あの、この方もしかして…毒に侵されていませんか?」ルイはリュウの顔を見る。


「あぁ、何でわかるんだ」と不思議そうなリュウ。

「僕は、セイノ様の弟子なのです」とルイ。

「ん?…セイノ様?森羅のセイノというと…」リュウ首を傾げて考える。

「あ!!賢者か!確かフクロウ属だったもんな」とリュウ。

「はい、森の賢者様です」と、にこやかなルイ。


「おぉ!助かった!こんなところに賢者の弟子がいるとは」とリュウが喜ぶ。

「じ…じゃあペン汰は、助かるの?」レインの目に涙が浮かぶ。


「ちょっと待て」セツが間に入る。

「ルイ様は、賢者様の重要な任務でここに来ておられるのだ。お前達は、さがれ!さっさと屯所に戻れ」と、すごい剣幕でリュウに命令する。

「何言ってんだセツ!ペン汰の命が掛かっているんだぞ!お前も模擬戦見ただろう。こんな優秀な奴を、ここで死なせる訳にはいかん!」リュウがセツに言い返す。


「ばかな!国の公賓だぞ!一兵卒の傷の手当など、させられるか!」セツの顔がどんどん険しくなり、2人は一触即発の雰囲気。


「セツ様、私は森の賢者の弟子を名乗ったのです。その意味がわかりませんか?」ルイが穏やかに話す。


「なっ…どういう意味でしょう…」セツが慌てる。

「森の賢者は、森羅同盟の守護者的武力を持つ一方、世界でも指折りの医学者でもあるのです。その弟子たる私が、弟子である事を名乗った以上、目の前の患者を放っておく訳にはいきません」真剣な顔で話すルイ。


「くっ…だが!貴方は、国務を優先しなければならない立場でしょう。このような者に構っている暇など…」セツが慌ててルイをペン汰から離そうとする。


「セツ様!この方を助けては、貴方に都合が悪いのですか?」ルイは、セツに詰め寄る。


「いや、そんな事はない…好きにされるが良い。私は帰らせてもらう」と言うと、セツは部下を連れてその場を去った。


「さて、リュウ様…でしたよね。この方の治療をする場所は、ありますか?」ルイは笑顔。


「ありがとう。屯所に医務室がある。行こう」リュウがルイを案内する。

「ペン汰…治るかもしれないよ!」レインは嬉しそうな表情でペン汰に話しかける。

「……」ペン汰は、まだ目を覚さない。


 屯所、医務室についた。

「では、ペン汰さんの傷を見せて頂いていいですか?」とルイ。

「あぁ!お願いする」リュウがルイの手伝いをする。

「……」ルイが傷口に顔を近づける。

「やはり、傷口から甘い香り。牙甘草の毒ですね。森羅の森にしか生息していません。

 甘い粘液で獲物を誘き寄せ、葉の部分の牙のよう突起から猛毒を出します。体内に入ればその場で気絶するほど強力な毒です」とルイは説明する。


「ただ、この植物は数が少なく、毒の成分を抜くと活力剤にもなりますから、森羅の中でも出回っていないはず。持っているとすれば、ある程度の権力者…」ルイは考える。


「まぁ、とにかく治療しましょう。牙毒の解毒剤もありますので」とルイは治療を始める。


数時間後。

「傷口の毒の処理と傷の処理。解毒剤の投与も終わりました。明日にでも目が覚めると思います」と少し疲労した様子のルイ。


「ありがとう!ありがとう!本当に…」レインが泣いてる。


「いえ、セイノ様の弟子となった僕の使命でもありますから」ルイは笑顔で答える。


「お礼は必ず、するから!」レインがルイの手を握る。


「お礼なんていりません」とルイ。

「いや!ペン汰の命を助けてくれたんだ!絶対に!」とリュウもルイの手を握る。


「わかりました。それでは、数ヶ月後でも数年後でも良いです。ペン汰さんが国外に出れるようになったら、ここの特産の氷丸を僕に届けてください!無料でお願いします」ルイは笑う


「わかった!ペン汰が起きたら絶対に忘れないようにって伝えておく!」とリュウ。


「では、僕は明日には国に帰ります。ペン汰さんによろしくお伝えください」ルイはお辞儀をして貴賓館に帰る。


「すごく良い人でしたね」とレイン。

「あぁ、さすがは賢者の弟子。まだ若いだろうに、森羅同盟の未来は明るいな」リュウは腕を組む。


「私達も同年代なんですけどね」レインは笑う。

「そうだな!お前達がいるペン帝国の未来も明るいな!」とリュウは、笑う。




 

 

 


 

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る