第21話 第一蒼律部隊へ


ペン汰達は、事務局で手続きを行なった。


「ペン汰さん、部屋お願いします」と係から案内がある。

「呼ばれたな、行ってこい。全部終わったら出口の所で集まろう」とソータ。

「わかった」とペン汰とレインが頷く。

「じゃあ、行ってきます」とペン汰は、部屋に入る。


テーブル席に座ると、係が2名座っている。

「では、ペン汰さん。どこに入隊するか決められましたか?」係は尋ねる。

「はい、第一蒼律部隊希望です」ペン汰は、答える。

「なるほど…第一隊ですね。ちなみに…第一隊は、戦場の最前線に向かう事になります。現状大きな衝突はありませんが、小競り合いが続いている為、危険な隊である事に間違いありません」と真剣な顔で係は話す。

「覚悟を決めていると受け取って良いですか?」とペン汰に尋ねる。


「…はい。覚悟は出来ています」とペン汰は、覚悟を決めた顔つき。


「そうですか。では、残りのスカウト対象者の聞き取りが終わり次第、第一隊屯所へ向かいます。係の案内に従ってしばらく待ってください」と係は笑顔で話す。

 (スカウト制度が始まったとはいえ、今年は粒揃いだな)と係は、上機嫌。


 待機部屋でペン汰が待っていると

「ペン汰!お待たせ」とレインが入ってきた。

「あ、レイン。待ってたよ」とペン汰。

「お二人は、希望する隊を知ってたんですね」と係がニコリ。

「あ、いえ、ライバルですから!」とレインが顔を少し赤くしながら慌てて答える。

「?」ペン汰はニコニコしている。


「まぁ、ライバルがいると言うのは、いい事です。第一隊のスカウト対象者は、お二人だけなので行きましょう」と係が案内する。


 ――第一蒼律部隊屯所。雪が少し強くなっている。

「そこの角を曲がると屯所になります。リュウ隊長には先に連絡入れましたので、スムーズに案内出来ると思います」と係


「ありがとうございます」とペン汰はお礼を言う。


 角を曲がると、屯所の前に腕を組んだ体の大きいペンギンが仁王立ちしている。

「おーい!こっちだ!早くこい」と叫んでいる。


「いやいや、リュウさん。雪の降る中で…相変わらずだなぁ」係は苦笑い。


3人は、リュウの所まで小走りする。

「よし、よく来たな!まさか2人ともうちに来てくれるとは!上々だな!ハッハッハ」リュウは、上機嫌に笑う。

「大きいなぁ、マユキさんぐらいかなぁ」と思わずペン汰は、声に出てしまう。


「うん?マユキさん?元蒼将のか?」とリュウがペン汰を見る。

「あ、すいません。声に出ちゃいました。そうです。元蒼将のマユキさんです」と慌ててペン汰は答える。


「あぁ、あの人もコウテイ系だったな。イワトビ系のお前からみたらデカく見えるよなぁ」とリュウ。


「まぁ、でもよ。系種なんて関係ねぇよ!全ては、努力!と、気合!だ!ハッハッハ」と豪快に笑う。


「そうですね。私達は、卵から孵らないと系種がわかりませんからね。親の系種は関係ないですもんね。

 リュウさんが言うように、その後の努力が大事…なんですけどね…昔からその辺りは意見が対立することが多くて」と係が悩ましい顔をしている。


「まぁ、そんな小難しい話はいい!」とリュウは笑顔

「そうですね!では、後はリュウ隊長にお任せ致します」係は敬礼し帰っていく。

 リュウと、ペン汰達も敬礼し屯所の中へ。


 

屯所にて、リュウが説明を始める。

「んじゃ、まず第一蒼律部隊の章を渡す。軍服につけとけ!次に寮だが、2階の奥から2部屋空けてある。好きに使え」とリュウが説明する。

「ん?」レインは、リュウを見る。

「あぁ、ウチは男も女も関係ねぇ」とリュウ。

「了解です」とレイン。


「あと、基本的には戦があればウチはすぐに出る。故に屯所にいる時間も少ないが、屯所にいる間は午前が学問、午後が訓練、後は自由!」とリュウが言い切る。


「なるほど、マユキさんみたいだ」とペン汰はクスッと笑う。


「なんだ?マユキさんの知り合いか?」とリュウ。

「マユキさんの孤児院出身なんです」とペン汰。

「あぁ、なんかそんな事書いてあったな!」とリュウは笑う。


「話を戻すが、君達の実力は試験で見せてもらった!すぐにでも戦場に行って大丈夫だと思っている。

 が…。ひとまず屯所で暮らして慣れてみてくれ」とリュウは提案する。


「ありがとうございます、リュウさん。頑張ります」とペン汰。

「隊長。了解致しました」とレイン。


「よし、じゃあ今日はここまで!明日から訓練に参加してくれ」とリュウは、帰って行った。


 ――翌日。

午前の勉強を終えて、午後の訓練に初参加する2人。

「よし!今日から参加する新人だ」とリュウは隊員に紹介する。

 50名ぐらいだろうか、整列してリュウの話を聞いている。

「副隊長。ショウ!前へ」とリュウが副隊長を呼ぶ。

「はいっ」とショウが前へでる。

「ペン汰とレインだ。教育を頼む」とリュウがショウへ2人を紹介する。

ペン汰達も、自己紹介を行う。


「俺は、先に戦場へ向かう!お前達は、待機戦力として訓練しておいてくれ!後はショウに任せる」と言ってリュウは、戦場へと向かう。


「では、今日から私が指導する事となる。皆この戦が落ち着くまで気を緩めるな!いつでも出動出来るよう気持ちを高めておけ!」とショウが一喝する。


「はっ!」と一同敬礼をする。


「では、隊列を組め!新人は後ろに回れ!」

 全体の動きの確認から始まり、進撃の型の練習、個人練習と続き。この日の訓練は終わった。


 訓練後、2人はショウに呼ばれる。

「初日の訓練お疲れ様だったな」と訓練では、見せない笑顔をショウは見せた。


「ご指導ありがとうございます」と2人は頭を下げる。

「うん、今日の全体訓練で、わかったと思うが。

 我々ペンギン属の強みは集団行動だ。隊列を乱すことなく外と中の兵が入れ替わることにより外側の兵の消耗を減らす動きだ」

「はい」とペン汰達は、頷く


「この動きは、隊全体が同じ感覚を共有しないと出来ない為、多種族では真似できない我々ペンギン属の武器でもある。

 お前達は、ここでの訓練で、この感覚を掴んでくれ」とショウは助言する。

「努力します」とレイン。


「うん、言いたいことはそれだけだ。いつ戦場に出るかわからんから、気持ちだけは切らさないようにな」と言うと、ショウは自室に戻った。


「頑張ろうね、レイン」とペン汰はレインの方を向く。

「頑張る…それは当たり前。

 あなたも私も、それ以上の努力が必要。

 戦場では、必ず個の力が必要になる時が来る」と真剣な表情のレイン。


「そうだね」とペン汰。


「私は、リーチと速さを生かして、突破力を鍛える」とレインはペン汰を見る。

「僕は…」ペン汰は、考える。


じれったそうな顔のレインが口を開く。

「あんた、バカなの?あんなすごい力を持ってるんだから、磨きなさいよ!」

 (気絶寸前の私の意識に入ってきた。弱気な私に気付いた。たぶん、相手の内面を知ることができる能力。普段から使えたら最高の武器になる)


「そ、そうだね。頑張るよ」と不安そうなペン汰。


「もぅ!」と悔しそうに立ち上がるレイン。


「私に勝ったんだから、堂々としなさいよ!ここに来る前の2週間も修行してたんでしょ!」とレインは、叫びに近い声を出して、自室に去って行った。


「おじいちゃんの家でやった修行…そうだ、あの感覚をいつでも使えるようにしないといけないんだ」とペン汰は、拳を握る。


 (明日から、対人訓練をお願いしよう。相手の内面を見るように意識しよう)ペン汰は、やるべき事を定めて訓練に臨む。




 

 

 




 

 

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