第11話 試験の行方


「登録番号をお願いします」

 施設の部屋に入ると案内係が番号の確認をする

「45番です」

「はい」案内係は、手持ちの資料に目を通す。

「ペン汰さんですね。今から合否の面談になります。こちらへどうぞ」

 案内係は、ペン汰を小部屋に案内する。


 コンコン、ガチャ。ペン汰は、小部屋に入る。

 小部屋には、軍服の兵隊が2名座っており。その正面に机と椅子がある。


「ペン汰さん、椅子にどうぞ」

 兵隊の1人がペン汰を案内する。

「よろしくお願いします」

ペン汰は、お辞儀をして椅子に座る。


「では」と兵隊が話しだす。

 ペン汰は、緊張した様子。


「単刀直入に、今回の試験。ペンタさんは合格となります」

兵が淡々と話す。

「えっ?…すみません、3次試験は?…確か試験は3次までありましたよね」

ペン汰は、戸惑っている。


 兵隊は、ニコリと笑顔

「審査は2次までです」


「……スーツの方は、3次までって…」

 ペン汰は、戸惑う。

兵隊は、笑顔のまま話す

「ペン汰さんは、真面目な方ですね。素直に好感が持てます。

 説明しますね。試験の説明を普通に聞けば、1次で学力、2次で体力、と考えますよね。

 入隊試験としては、その2点をみれればいいのですが…我々は、もう1点見ていました」

ペン汰は、不思議そうに聞いている。

 

「試験という特別な環境の中で、きつい2次試験を、どれだけ冷静に体力配分しながらこなせるか。ペン帝国の流派は、蒼律剣術です。特別な状況の中でどれだけ自分を律する事が出来るのか…。

 特に、次にある3次試験を意識して体力をどれだけ残せるか。

 そこも審査材料の一つとして見ていたのです」


 ペン汰はなるほど、と納得した顔をした。

「わかってもらえたみたいですね。改めて、合格おめでとうございます」


「ありがとうございます」

 ペン汰は、頭を下げる。


「とはいえ、試験は3次までとなっていますので、3次試験も行います」


「えっ?合格きまってるのに?」

 ペン汰は、びっくりしている。


「そんな反応になりますよね」

 兵隊は笑っている。


「なります…」

 と正直なペン汰。


「3次試験は模擬戦です。これは、審査とは関係ないのですが、蒼律剣術の熟練度を参考までに見せてもらうためのものです」

 と兵が話す。


「熟練度…ですか」と、あまり納得の出来ていないペン汰。


「試験審査は2次まで、3次試験の模擬戦で配属先が決まる可能性があります。あくまで参考程度ですが」


「あっ…なるほど」とペン汰。


「模擬戦に関しては、国の上層部の観戦が許可されています。もしかしたら、スカウトの声がかかるかもしれません。普通なら、訓練生からのスタートですが…声がかかれば正式隊員として入隊できます」

兵隊は、ニコニコしている。


「すごい…そういうシステムなんですね」

(おじいちゃんを探しに行く近道になるかも)

 ペン汰は、目を輝かせている。


「まぁ、このシステムというか、試験内容自体が今年初めて行われる形式なんだけどね」


「ん?」ペン汰は首を傾げる。


「ま、まぁそういうシステムだから、模擬戦といえど、しっかり頑張って!」


「わかりました!ありがとうございます!」

 ペン汰は、頭を下げる。


「じゃあ、控え室に行こうか」

 と案内係がペン汰を控え室へ案内する。



 ペン汰が控え室のドアを開けようとした瞬間。


 ドゴォーン

「ぐわぁっ」

声と共にドアにすごい衝撃が伝わる。

「えっ?この声…」

 慌ててペン汰がドアをあける。


 目の前にいたクロウが剣を抜いている。クロウの冷たい目線の先にペン汰が視線を移すと……


ソータが壁にもたれて倒れている。

「ソータ!ソータ!大丈夫?」

 ペン汰は、慌ててソータに、駆け寄る。


「クッソォ」

 ソータは、頭を抱えながらゆっくり上体をおこす。

「あの野郎、またいきなり剣抜きやがって」

ソータも剣を抜こうとしている。


「ち、ちょっと待ってソータ」

 慌ててペン汰が止める。


 周囲は、いきなりの出来事らしく、ざわついている。


「何事だ!」

 ペン汰と共に来ていた兵が割って入る。


「チッ…また邪魔が入った…」

クロウは、ペン汰とソータを睨む。


「何かおかしいよね…あの人。どうしたんだろう…」

 ソータに斬りかかったクロウに対して怒りもあったペン汰だが、それ以上に正気じゃないクロウの心配をしてしまう。


「何があったかわからんがとにかく、クロウ君!剣を収めろ!ソータ君は医務室へ」

 騒ぎを聞きつけて、駆け付けた兵がソータを保健室へ運ぶ。


(これでソータは、大丈夫だね。でも…)

 ペン汰は、安堵すると同時にクロウの正気の灯らない瞳が気になっていた。


 (なんだろう、この気持ち。微かだけどクロウさんの哀しみが流れてくるような…)

 ペンダントが淡く光っている。


 クロウは、兵と共に事務所の方へ連れていかれる。

 なんとか、場は収まったが、室内はざわついている。

「クロウさんも気になるけど、今はソータのところへ行こう」とペン汰も医務室へ向かう。


「トラブルはありましたが、3次試験は話した通り模擬戦を行います!1時間後から開始します。

 対戦表は、今から貼り出しますので、確認をお願いします。1試合10分で進めていきます。

 案内に従って試合を行ってください」

と案内係が説明するが、会場は重い雰囲気。


「みなさん、貴重なアピールの場でもあります。

 今後の出世にも関わりますので、気持ちを切り替えて臨んでください」

スーツの兵隊は、ニコリと笑う。


「そうだよな。アピールの場なんて、この先あるかわからんぞ」と所々で囁いている。


 その様子をみて、兵はよしよしと頷く。

「では、1時間後!」

と、兵達は部屋を出だ。

 


 

 

 


 


 

 

 

 


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る