第10話 試される受験者



「45番の方、外へお願いします」

 ガタッとペン汰が立ち上がる。


 ペン汰が後ろを振り返る。

「行ってくるね」

ソータが拳を前に突き出す。

「うん!ペン汰なら大丈夫!」

 ペン汰も拳を突き出す。


「ありがとう!待ってるね」


 ペン汰は、恐る恐る外に出る。


「はい!こちらです。お名前をどうぞ」

 と、案内係が答案用紙を見ている

「ペン汰です」と、緊張した顔のペン汰が答える。

 

「ペン汰さん…」

「おめでとう!こちらの部屋に進んでください」

 と正面の部屋に案内される。


 ペン汰は、案内された部屋に入った。

 ガヤガヤとしている。

 部屋には、合格者が用意された椅子に順番に座っている。

(あれ、僕が45番だから…)

 ペン汰は、ざっと数を数えた

 (30人ぐらい…思ったより減ってる。ソータ大丈夫かな…)

 ペン汰も、椅子に座る。

 (マユキさんの座学を一緒に受けたソータなら大丈夫だよね…)

 ペン汰は、不安な顔をしている。


 しばらくすると。


 ガチャっとドアが開く。


「ペン汰!いたな!」とソータの声


 ペン汰の顔がパァっと明るくなる。

「良かった」と、思わず言葉に出るペン汰


「……」

 ソータの顔がむくれている

「なぁ、まさかとは思うけど。

 落ちるかも、とか考えてた?」


 ソータがペン汰の横に座り、顔を覗き込む


 ペン汰は、少し焦った顔

「いや、そんな事ないよ。

 ソータ、少しおバカだから…」


「おま…」

ソータは、ペン汰の頭をはたく。

「正直過ぎるのも大概にしろよ」

ソータは、笑っている。

ソータの顔を見てペン汰も笑った。

「ごめん」


 合格者には、クロウの顔もあった。


 残りの合格者が、部屋に次々と入ってくる。


「さあ、これで全員ですね!

 では、2次の説明に入ります」と、スーツのペンギンが話しだす。


 全員注目する。

「一応報告しておきます。1次通過者が50人です」


「えっ、そんなに減った…」「なんで…」「名家の子がいないぞ」と会場の所々から声が聞こえる


スーツのペンギンは、ニコニコしている。

「そんなに難しい試験では無かったと思うんですけどね。残念です…

 が!皆さんは無事に通過されました。私達も嬉しいです。」

と、案内係たちは、頷きながら拍手している。


「では、2次試験の内容を説明します」

 ペン汰は、ゴクリと唾を飲む。

 ソータも真剣な顔をしている。

 

「2次では、基礎的な体力を見せて頂きます。

 グラウンド30周後、筋力トレーニングメニュー50回ずつ、その後に打ち込み200本となります」

メニューを聞いて受験者の顔が曇っていく。

 

「ちなみに…入隊後のメニューは、この3倍ほどです。

 そんなに難しいものではありません」

 スーツのペンギンは、ニコニコしている。


「あの人、いい性格してるね」とペン汰

「うん」とソータ


「これは、他人と競うものではありません。

今までの積み重ねた努力を見せていただくだけです。

 無理にペースを上げなくて結構。様々な角度から、総合して判断いたします。そして、合否の理由も個人個人に伝えさせて頂きます」

スーツのペンギンがドアを指差す。

「それでは、案内に従ってグラウンドへ」


 案内係が順番にグラウンドに案内する。

 グラウンドは、少し雪が降っている


「うわぁ、なかなか広いねー」と、ペン汰。

「広いけど、孤児院の外周と変わんないだろ」

 余裕そうなソータ。


「それでは、一斉に走りましょう、30周スタート」

 スーツのペンギンの掛け声で、一斉に走りだす。


 最初は、バタバタとし走り出しだが、次第にまとまり、順調に全員が走り終える。


「さすがに、1次を突破している皆さんですね。

 お勉強を頑張っている方は、真面目に走り込みも行っているのですね」

スーツのペンギンはニコニコしている。


「次は、腕立て、腹筋、立ち幅跳び各50回です」

「スタート」


 全員初めは、勢いよくメニューをこなしていたが、

 走り込み直後のトレーニングのため、中にはバテてしまう者もいた。


「はい、終わった方から。あちらに用意されている木剣で打ち込み200本です」


 息つく暇がないとはこの事。自分のペースを乱したものが次々と座り込んでいる。


 そのころペン汰とソータは。

「なぁ、ペン汰」

「どうしたの」

「こんなにゆっくりやっていいのか?若干剣が重いぐらいで、大した事ないし。マユキ先生いたら木刀振り回されるぞ」横で並んで打ち込みしているソータが話しかける。

「じゃあ、早くやればいいんじゃない?

 試験だからさ、次何があるかわからないのに体力使えないじゃん。僕はこのまま続けるよ」

ペン汰は、自分のペースを崩さない。


「それにさ、周り見てよ。自分のペース崩した人は、バテて座り込んでるよ」

ペン汰がチラリと周りを見る。つられてソータも見る。

「…」

「よし!俺も自分のペースで頑張るぞ!」

 ソータの様子を見てペン汰は、クスッと笑う。


「はい、打ち込み終わった方は合否の面談になります。順番に施設内にお戻りください」

案内係が手を挙げている。


「あれ、もう終わり?じゃあ全力だ!」とソータが全力で打ち込みをはじめる。

「ちょっとちょっとソータ!!」

ペン汰が、止めようとするが、止まらない。


 10人ほどが終わり、先に施設内に戻っている。

「よっし!終わり!ペン汰お先!」

 と、ソータが施設内へ走るが…疲労が見える。

(もう……無理するから疲れるんだよ)

「ん?あれは…」

 クロウがソータの前に施設に入っていく。

 (あの人も2次受かりそうだ。確かにすごい剣速だったもんな。

 僕は、僕のペースで頑張るぞ)

 


 ペン汰は、自分のペースを守り打ち込みが終わる。体力を残したまま施設内へ進む。

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