理想を追い求めたら、現実は悲惨だった。

プギ

00話

「あの頃はよかった」と思う人は、世の中にどれだけいるのだろう。

僕も、そのうちの一人だ。


夜中のコンビニ。

休憩中、僕は外に出て、一本のタバコと缶コーヒーを手に持ったまま、暗く、重たい夜空を見上げていた。


白い煙をふっと吐き出し、数秒のあいだ、何も考えずにただ立ち尽くしていた。

まるで、時が止まったように。


……でも、仕事に戻らなきゃいけない。


そんな現実がふっと頭をよぎって、僕はため息まじりにタバコを揉み消し、店内へと戻っていった。


レジの前に立ちながら、ふと思う。


――俺は今、何をしているんだろうか。


いつから道を間違えたんだろう。


母親の影響で、人には優しくしてきた。友達も、たくさんいた。

けれど、今は。


「……何もない」


ぽつりと漏れたその言葉が、自分の気持ちをますます沈ませていく。

音もなく心が沈む感覚が、胸の奥に広がっていた。


深夜のバイトが終わると、僕はコンビニで酒とつまみを買い、自転車に乗って帰路につく。

体は疲れているのに、眠れない夜が続く。


昔の僕は、自己肯定感のかたまりだった。

お金持ちになって、友達に囲まれて、きっと結婚して……そんな順風満帆な未来が待っていると思っていた。


でも今の僕は、まるで別人だ。

自己肯定感なんて、もうとうに底をついている。


――いったい、いつからこんなふうになってしまったんだろう。


ちょっとしたきっかけだったのかもしれない。

ほんのささいなボタンの掛け違いで、気づいたら、ここまで来てしまっていた。


人は、こんなにも簡単に変わってしまうものなのか。

それとも、元から僕はこうだったのか。


変わってしまった人生が、怖い。

何もかもが思い通りにならない自分が、悔しい。

そして、そんな自分が――憎い。


だけど、じゃあどうすればいい?

何をすれば変われるのか。

誰かに頼ることもできない今、僕にはもう、わからなかった。


それでも、ほんの少しだけ願っている自分がいる。


変わりたい――と。















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