『トイレの松本さん』

やましん(テンパー)

『トイレの松本さん』 上


 ホラーというほどの、ホラです。



 またまた、お客様とひと悶着やってしまい、地方本社から、海沿いの支店に飛ばされました。


 といっても、2回目です。


 お客様が良くないのです。むちゃくちゃ言うからです。


 しかし、15年ぶりで、様子はすっかり変わっていました。


 知ってる社員はひとりだけ。


 ただし、ボスは2回目で気心は知れていますが、


 『なんだ、また、お前か。けっ。』


 と、言われました。


 ぼくは、一番年食ってるだけで、いまは役職はありません。


 だれも、相手にしてくれないし、引き継ぎもちょっとしかありません。


 まあ、仕方ないです。将来のない先輩に優しくする人は、あまりいませんから。


 ぼくは、病気もちで、とくに、泌尿器科系統に問題があり、ステントを入れているので、お手洗いが非常に早いです。


 30分持たないくらいです。


 紙パンツでは、限界があるし、高いから頻繁には変えたくありません。


 しかし、職場では、そうした事情はあまり考慮されませんが、なにしろ、おトイレさまは許さないのです。


        🚹️😱💦


 で、転勤後、初おトイレに参りました。お客様用は別にありまして、時代がかった、1人用の小さなものであります。


 すると、なんと、便器の中に、花束が置かれたりしていて、使えません。


 たまたま、清掃会社のおばさまが来ていたので、尋ねました。


 『使いたいのですが。』


 『え! 聞いてないですか?』


 『はい?』


 『ここは。つかっちゃならないだべな。』


 『なに〰️🥵 なんで。』


 もう、ぎりぎり状態であります。


 『なんで、て、つまり、出るからですぞな。』


 『はあ? でる? なにが?』


 『松本さん。』


 『まつ…………聞いたことないな。だれ?』


 『幽霊さんれす。正体は不明ですが。まあ、どうしても、ちゅうなら、花束さどけて、やってください。あと、念入りに掃除するだ。ただし、でも、祟りがあるだ。必ず。あなただけでなく、あとひとり、だれかに。だれかは、わからないだべ。身体に恐ろしい異変が起こるだ。恨まれるだなあ。』


 『なんと。りふじんな、よし、話し合いをしてみよう。ぼくは、この、幽霊避け話し合いお守りを持っているから。』


 『あらあ。なんと? ま、ご自由に、あたくしは、関わらない。』



           😘



 『あー。まつもとさん。でてきてください。』


 ぼくは、家宝のお守りを胸ポケットから出して、そう、言いました。


 『ぬあんだあ。さっきから、ごちゃごちゃと。あら、あなた、どなたですか?』


 『今日、転勤してきました、やま・しーんです。でも、15年前にもいました。そのとき、あなたさまは、いなかった。いつから、いますか?』


 『さて、15年くらいかなあ。使いたいのか? いいよ。でも、呪います。はげしくね。痛くて痛くて仕方なくする。』


 松本さんは、ぐわっ! と、急激に近寄ってきて、叫びました。


 『わ! そのお守りは、まずい。身体がしびれる。』


 そう言って、おトイレの中に、どっと、引きました。


 『話し合いをしましょう。痛いのは、いまでもじゅうぶんに、痛いんだから。』


 『なに? ふうん。はなしあい。そのお守りを放したら、はなしましょう。』


 『いや、それは、まずい。』


 『なら、いやだね。』



 話し合いはこう着状態に陥りました。



 『祟ってやります。みんなに、た、祟りましょう。たたたたたたたたたたたたたたたたあ!』




 ぼくは、一旦引きました。


 そして、後輩の上司、総務課長さんに、その話をしました。


 『げっ。先輩、聞いてないですか?』


 『まったく。なんですか。あの方は。』


 『いやあ。………あの、あそこは、使わずに、昼休みまで我慢できませんか?』


 『できるわけないだろ。課長さんこそ、ぼくの状態について、聞いてない?』


 『いやあ? あんまりは。トイレがやたら多く、迷惑だ、としか。』


 『はあ。そんなものか。会社なんて。』


 『プライベートには立ち入りませんから。』


 『まつもとさん、と、話をしました。』


 『ぎょわ〰️〰️〰️。な、な、な、な、な。😱』


 『ぼくにとって、お手洗いは、命をつなぐヒモです。泌尿器科系統の病気でステントを入れています。痛いし、我慢できないよ。後には引けない。30分もたないんだから。』


 『そこを、なんとか。特別に、むかいのコンビニや、スーパーに行っていいですから。松本さんとは、協定があり、あそこは聖地とするかわりに、祟りはしないと。コンサルタントさんを通じて締結したのです。』


 『そんな、しょっちゅう外に行けないだろ。だいたい、信じがたいが、ま、話をしたから、信用はしたが、そこは、職場でなんとかしてください。できないなら、事務所を水だらけにするまで。』


 『いや、それは、まずい。紙パンツとか。』


 『してますよ。でも、とても、カバーできないのです。』 


 『ちょ、ちょ、まって。ボスに相談します。とりあえず、むこうのスーパーに行ってください。許可します。』



    😭😭😭😭😭😭😭😭😭😭😭😭



 『おまえなあ。そら、なんとか、我慢ならないか?』


 ボスが無理を言います。


 ボスとは、同期で、昔からわりに、仲良しなんですが、立場が違う。


 『そんなこと言われてもなあ。』


 『プライベートトイレとか、持ち込んでいいから。特別だ。』


 『そいつは、費用もかかるし、結局、処理ができないですよ。なにかと、トラブルのもとですよ。』


 『固めて、持って帰れ。』


 『ふーむ。まあ、やってはみるけど。しかし、いつまでもそれでは困る。だれなんですか、あの方は?』


 『企業秘密なんだ。』


 『はあ? 昔は。いなかった。』


 『きみと、入れ替わりだったんだ。』


 『むっ。』


 突然、ぼくには、ふと、むかし、聞いたような話がある覚えが、はたと、ひらめいた。



         🙈🙊🙉





 

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