第9話 妄想はほどほどに
「おーお坊さん。今日も元気?」
表の通りから歩いてきたのは首から数珠を下げたお坊さんだった。
「ああこの通りさ、フレンドリー。いつもの」
「ヘイお待ち」
あの人は学校の裏手にある──
「蛙神社の?」
私の声にこっちを見ると。
「いかにも、蛙神社宮司、兼、僧侶の
帰り道に前を通ると、たまに掃き掃除をしてるのを見かける。
小さいことは町内会のイベントとかでお世話になってた。
なんでも継承者がいなくて、近くの大きいお寺の僧侶と兼ねて、神社の宮司もやってるらしい。
「今日も旨そうだ」
「旨そうだじゃなくて、ホントにうまいぜ」
「へっへっへ」
なんか嫌なノリの会話を交わしてケバブを受け取る。
「フレンドリーさん、あのお坊さんのこと好きなの」
耳元で華久良がこっそり話してきたので目を向ける。
「いつも会いたくて、わざわざこっちの通り側に店出してるの」
「へー」
「内緒ね」
「うん」
何こそこそ話してるんだろうと、フレンドリーさんが不思議そうにこっちを見てる。
「ケバブおじちゃん、こんにちは!」
歩道を走って来たのは、小っちゃいおもちゃの車に乗った小さい子。
散歩中かな。
「今日も、見守りご苦労さまです」
フレンドリーさんがしゃがんで敬礼すると、
「うむ」
と敬礼を返す。
「気を付けてな」
元から小さいけど小さくなっていく背中に、手を振るフレンドリーさん。
「早く食べないと冷めるよ」
もう食べ終わってる華久良。
「んー……」
なんか腑に落ちないけど、腑に落ちたのかな。
まあいいや。
存在するはずのケバブに口を開ける。
「ん……美味しい」
◇
「変な妄想してないで手伝ってよ」
「わお」
ボーっとしてた。
メスで切り開いた腹が丸まってくるのを、抑えている華久良。
物言いたげな目線で見てくる。
ちなみに──もうカエルはカエルの姿をしていなかった。
「今の……聞こえてたというか、見えてた?」
「なんか解剖の準備始めた辺りから、変なこと考えてるなとは思ってたよ」
「……どうだった?」
「私を解剖したり、ねちょねちょにしたり、体調悪くしたりしないでほしい」
「あ…それも聞こえちゃってたか」
「あと、最後のまとめ方が適当」
「妄想だから」
「我慢してたけど、そろそろ終わりね。手伝って」
「うん」
変わり果てた姿のノノちゃんに向き合うのだった。
テレパシーで妄想が伝わってた 堀と堀 @poli_cho_poli
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