第3話 KBB

「あれ食堂スルーした」

 食堂のホールの前を通り過ぎて……こっち行っても外なのに。

「ケバブ屋さん」

「ケバブなんか来てるの? うちの学校」

 学校の裏手に出ると、小ぶりなキッチンカーが確かに止まってた。

「普通面に来ない?」

「路地裏の名店みたいな。冷やかしはお断りだぜ、みたいな?」

「ケバブは冷やかしでなんぼだぜ」

「そういう人がいるから」

 中で作業してるのは欧米な感じの人だった。ひげの生えた白人さん。

 背が高くてキッチンカーの天井にぶつかりそう。

「あんまり現地じゃない人が作ってるイメージないけどな」

「ケバブ好きで真似して始めたんだって」

「へー」

 近づくと私たちに気づいて顔を上げる。

「へいらっしゃい」

「寿司屋か」

「ケバブ屋です」

「見ればわかるよ」

「たまに……チェロス屋と間違えられます」

「チェロスも食べたい」

「あっしには無理です。やつらは……五本指ソックスしか履きません」

「あの、フレンドリーさん。いつもの」

「へい! いつもの入りやしたー!」

 くるくる回ってるやつを切り始める。

「フレンドリーって名前なの?」

「友達がいっぱいできるようにって、両親が付けやした。でも逆に、気張りすぎたのか一人も出来ませんでして」

「えー」

「フレンドリーって名前だと、フレンドリーでいなきゃいけない気がするでしょ? プレッシャーなんす」

「じゃあ、逆に鬼みたいな名前にすればハードル下がって良かったかもね」

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