操作の目的

100chobori

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 「学校に遅刻してはいけない。毎日八時半に一時間目が始まる。なぜか。そういう決まりだから、じゃないんだよ。なんでそんな決まりが必要なのか。そういう決まりを作る目的が必ずある。教師は一人の生徒に対して授業を行うわけじゃない。たくさんの生徒に三年間かけて平等にいろいろ教えなければならない。みんな同じ学費を払ってるんだからな。だとすれば、ちゃんと決まった時間に始めて決まった時間に終わらなければ、一年間で何をやるかってことを決められないだろ? その上で、お前達は学校と約束してんだよ。勉強教えるから何時に来てねって。学校は約束を守ってちゃんと時間通りに授業を始めてるよな? だけど、お前達が来なかったら約束を果たせないだろ? お前達が遅刻したら、学校はお前達に誠意を示せないってことなの。わかるか? もちろん、来たくなければ来なければいいだろうよ。義務教育じゃないからな。ただし、卒業できないのは当然だよな」

 放課後の教室で、数学教師の長谷川は生徒のイスに後ろ向きに座り、背もたれに腕を組んで貧乏揺すりをしながらしゃべっていた。彼の前には男子生徒が二人、俯き加減に立っている。二人は遅刻の常習犯だった。

「いいか? 約束ってことだからな。意味分かった?」

 長谷川が問いかけると、二人の生徒はわかったようなわからないような返事をした。

「じゃ。明日は遅刻すんなよ!」

 そう言って長谷川が立ち上がると、二人の生徒は小さくお辞儀をして教室から出て行った。

 生徒達の少し後に長谷川も教室を出ると、二人がふざけ合っている声が廊下の向こうから聞こえてきた。

 長谷川は彼らに背を向け、職員室に向かった。

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