むきあう

Iloha

第1話

「君のそのかんじなんだよね…」


友達がぽつりと呟いたことがある。


「そのかんじってなあに? 

女らしいってこと? やだあ! 」


いい年こいてるのにどうにも引っ張られる。

誰かの思惑とかそんなかんじ。


男も女もそう。

やんなっちゃうの。


期待通りの君でいてほしい。

そうじゃないとびっくりするみたい。

なんだか怒られたり。

臍曲げられたり。


ううん…

ここしばらく考えたのよ。


私は誰にもあなたにはこうでほしい、

なんて言わないでしょ。


でもそう思う人は少なくない。

みんな多かれ少なかれそうじゃない?

「べき、すべき」


ああ!窮屈だったら!


娘なんかには言うわよ。

なりたいものになりたいなら、

ちゃんとそうなるようにしなさいって。


親だもの、躾けるわよ。

でもラインは守るわよ。


でも私は躾られたくないの。

大人だもの。

大嫌いなものは同調圧力よ。


好きなもので出来ているのが私。


誰に見せるわけじゃないけど、

真っ赤なペディキュア。

そうしたら今日のプランは決まり。


好きな香りや洋服を買う。

ポチるんだから。

私のための買い物、私のエッセンス。


別に外に着ていかなくてもいいの。

密かに忍ばせるの。


滲み出て、襟足掴まれることもあるかもね。


フン、知らない。

スッと首をひっこめて、

じっと見返して黙るの。

踵を返して姿勢良く歩くから。

しかと見てなよ。



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