第2話
遥香へ
君がこの手紙を読んでいるということは、もう俺はこの世に居ないのだろう。
40年間ずっと…
俺に尽くしてくれてありがとう。
香織も憂也もしっかりと成長してくれて…
家庭も持ち、あの子達はもう俺が居なくても大丈夫だろう。
最後にこんな手紙を残して逝くことを許して欲しい。
今、死を目の前にして…俺の心はやっと平穏を取り戻せたんだ。
やっと解放される。
俺はずっと、ずっと苦しかったよ。
君を愛しているのに…ずっと憎かった。
ふとした時に湧き出る憎しみを…抑える辛さが分かるかい?
愛している人を壊してしまいたい衝動に襲われて…
早くなる動悸と…
真逆に呼吸を鎮めて…
カタカタと震える手をもう片方の手で握り締めるんだ。
心と身体と衝動がバラバラなんだ。
右手を動かすつもりで左足を動かしてしまうみたいな。
笑ってしまうだろ。
あの時、君の過ちを赦したコトを…僕は何度後悔したか分からない。
香織を見る度に、僕はずっと誰かの影を見ていたんだ。
愛しているのに、手が届かないんだ。
君を赦してから…産まれた憂也。
間違いなく俺の子なのに…俺は憂也を心のままに愛してあげるコトが出来なかった。
だって…それをしたら、香織が可哀想だろう?
香織と憂也…二人共を自分の子だと愛せる君が羨ましかった。
俺の人生に意味は無かったなんて言わない。
俺にとって…俺自身にとっては…分からないけれど・・・
少なくとも、君と香織と憂也にとっては意味があったと思いたい。
本当に…君を殺したい程に、愛していたよ。
この想いは墓場まで…のつもりだったんだけど
でも・・・
やっぱり…
世界で一番憎くて、
愛している…君にだけは知って欲しかった。
最後に思うんだ。
俺の人生は幸せでも、不幸でも…どちらでもなかったよ。
誰にも評価なんてされたくない。
唯…俺の人生は君のために在った。
やっぱり…1人きりの夜は寂しいよ。
ありがとう。愛してる、遥香。
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