第二十三話 ソロモンの修羅場
> ――1942年11月12日深夜、アイアンボトム・サウンド
“死者の海”と呼ばれるソロモン諸島の水域に、雷鳴がこだました。
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出撃命令
「第十戦隊、比叡・霧島直衛。敵艦艇の哨戒・掃討を命ず」
トラック泊地での通達を受け、雪風は第十戦隊の一艦として挺身艦隊に加わった。目的はただ一つ――ヘンダーソン飛行場の砲撃支援。だが、彼らはまだ知らなかった。
この出撃が、最悪の夜戦への扉となることを。
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午前0時過ぎ:照射、開戦
「敵艦、見ゆ! 近いぞ――!」
視界の奥、闇の中に、敵のマストと艦橋が浮かんだ。
雪風は即座に探照灯を照射。照準、撃て!
一斉射。砲口の閃光。
続いて、00時15分――雪風は正面の巡洋艦に対し照射砲撃を実施。命中多数を確認。
伊豆少尉が叫ぶ。
> 「推進流に乗ってる!敵、動きが鈍いぞ――!」
00時25分、マハン級と思われる敵駆逐艦に再度照射。間髪入れず砲撃と魚雷斉射。
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艦橋、混乱
「前方、友軍の照月です! 被弾しています!」
「天津風、煙が――!」
雪風の左舷後方。姉妹艦の天津風が爆炎に包まれていた。
後部缶室に直撃。速力は16ノットに低下。
兵員が甲板を這いながら避難する光景が、閃光の合間に見えた。
斉藤通信士が唸った。
> 「何が起きてるのか……魚雷を撃ったかどうかすら、もうわからない……」
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誤射、誤認、錯綜
爆煙と探照灯が交差する。敵味方の識別が曖昧になる中、突然――
> ズン!
轟音とともに、雪風の右舷船体に異音。
> 「浸水発生! 被害、軽微。おそらく……味方の誤射」
照明弾と探照灯の眩光が、戦場の輪郭を消し去っていた。
そこには指揮も連携もなく、**“本能の殺し合い”**だけがあった。
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戦闘報告
午前1時前。雪風は一時退避しつつ、戦闘報告をまとめた。
00:15 巡洋艦に対し照射砲撃
00:25 マハン型駆逐艦に照射攻撃
「撃沈確実と認む」
事実、この戦闘で雪風は、防空巡1隻(長良・春雨と共同)、**駆逐艦1隻(長良と共同)**の撃沈が認定された。
だが、戦場に確実などなかった。
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そして夜が明ける
雪風は天津風の後退を援護しつつ、夜明け前に戦線を離脱した。
ガダルカナル島の山影から、かすかな陽光が射す。
夜の狂気が、ようやく終わる気配がした。
伊豆は後部甲板で、血のついた救急布を見つめていた。
> 「……こんな夜戦、二度とやりたくねぇな」
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