第二十二話 挺身艦隊、出撃
十一月。ソロモンの空と海には、鉛のような重圧が垂れ込めていた。
連日連夜、ガダルカナル島の上空を舞うアメリカ軍の哨戒機。
そしてヘンダーソン飛行場から飛び立つ艦爆隊による容赦なき雷撃。
もはや、日本軍の前線拠点は、昼間は空が敵、夜は海が敵という地獄の様相を呈していた。
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砲撃命令
トラック泊地の戦闘司令室に、連合艦隊からの暗号電報が届いたのは、11月9日のことだった。
> 「挺身艦隊編成。金剛型戦艦 比叡・霧島による夜間飛行場砲撃を実施」
「第十戦隊旗艦長良、第四水雷戦隊、駆逐艦多数、護衛随伴」
「雪風、第十六駆逐隊、編入セリ」
伊豆涼介少尉は、命令文の行間に血の気を感じ取った。
> 「金剛と霧島が出てくる……てことは、もう一か八かってことだな」
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出撃準備
雪風の艦橋では、艦長・菅間中佐が乾いた声で全体通達を発した。
> 「全員、今夜の食事を腹に入れておけ。途中で吹っ飛ぶ可能性もあるぞ」
僚艦・天津風も横に並び、出撃準備を進めていた。
第10戦隊旗艦・軽巡長良、第61駆逐隊の照月、第6駆逐隊の暁、雷、電、
さらに第四水雷戦隊の旗艦・朝雲と、第2・第27駆逐隊の面々も加わり、
総勢十数隻に及ぶ艦隊が、まさに「夜戦突撃隊」と化していた。
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出撃前の士官室
その夜、雪風の士官室では、短いブリーフィングが行われていた。
作戦図には、**“ヘンダーソン飛行場・夜間砲撃”**と赤線が引かれていた。
> 「我が方の戦艦が主砲で飛行場をたたく間、我々駆逐艦隊は護衛、対潜、迎撃を担当する」
「艦載機の反撃は日付が変わるころから始まると予想される」
「目標:飛行場への砲撃完了後、速やかに反転。被弾回避を最優先とする」
伊豆は図上の一点を見つめた。
そこは、サボ島沖――初風が消息を絶った海域だった。
> 「……今度は、俺たちが行く番か」
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11月12日 深夜:挺身艦隊、出撃
出撃の号令と共に、黒く塗装された艦体が海面をすべるように動き出す。
主力の比叡、霧島を中核に、雪風ら駆逐艦群が前衛と側衛を固める。
全艦、灯火管制。無線は最小限。
月明かりだけが、暗い海面に味方の影を浮かび上がらせていた。
> 「伊豆、後部電探室より。敵電波、まだ確認されず」
「了解。……一時間もすりゃ、火の海だ」
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暗号通話・艦間連携
作戦中、無線封止を破らないよう、艦隊は**暗号化済み点滅灯通信(モールスの閃光)**と、
旗流信号の最低限運用で連携をとった。
> 「天津風より信号。“比叡の主砲、砲口温度上昇異常なし”」
「照月から連絡。“対空砲戦準備完了。標的は東岸の滑走路端”」
「朝雲より、“索敵班よりサボ沖に反応なし”」
伊豆は甲板の赤い微光ランプの下、確認報告書に素早く記入する。
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士官たちの想い
> 「昔の連合艦隊じゃ、戦艦が出るってのは“見せる”って意味だった」
「今は……“賭ける”ってことか」
そのとき、前方の夜空に閃光が走った。
比叡、霧島、主砲斉射。
ソロモンの島影が揺れ、遠雷のような轟音が轟いた。
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