第十四話 ミッドウェーの衝撃
1942年6月初旬。雪風はサイパンの泊地を静かに後にした。涼介は艦橋の手すりに肘をかけ、まだ薄明かりの水平線を眺めていた。
「今回は正規の戦ではない、攻略部隊の護衛だとさ」
航海長がぼやく。涼介も頷いた。今回は近藤信竹中将率いる第二艦隊の一員として、輸送船団の護衛任務に従事している。目的はミッドウェー島の攻略支援――だが、雪風に与えられた役割は、あくまで後方支援にとどまる。
南雲機動部隊が正面に立ち、赤城、加賀、蒼龍、飛龍という日本最強の航空母艦群が空からの制圧を担っていた。
「まったく……空母四隻も出して、米艦隊を釣り出すとはね」
「成功すりゃ圧勝、失敗すりゃ……」
航海長の言葉を、涼介は最後まで聞かず、そっと視線を水平線に戻した。
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6月5日未明、戦況が大きく動いた。
「信じられん……赤城、加賀、蒼龍、大破炎上。赤城は放棄。飛龍も炎上との報……」
通信士の声が、艦内に静かに響き渡った。
艦橋に立つ涼介は、絶句していた。胸の内に冷たい何かが流れ込んでくる。これが夢であってほしいと、どこかで願った。
雪風は輸送船団の防空にあたっていたため、爆撃の直撃はまぬがれた。しかし、空母群は別行動中だった。護衛戦闘機も十分ではなく、敵機の奇襲を許したという。
「艦長、これは……取り返しがつきません」
「……この一戦で、帝国の命運は大きく傾いたかもしれん」
誰もが声を失った。四隻の空母とその熟練搭乗員たちの喪失は、戦力としての穴以上に、日本という国家の「自信」に深く食い込む傷だった。
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