第6話 盗賊退治

「イッちゃん、王都まで出来るだけ途中の町に寄って、ギルドに所在情報流す事! 気を付けて! 女の一人旅盗賊が狙うぞ! 生け捕りとか考えず殺せ!」


「ゼンさん? 私のお父さんか? 心配し過ぎだよ!」

 サブギルマスのゼンさんには、登録仕立ての新人の時から世話に成ってる、孤児だった私ってゼンさん以外と親しく話出来る人は居なかった。

⦅こいつ悪人面なのに良い奴だな! イチの事随分心配してる、王都ってそんな怖い所か?⦆

「カエル君、王都が怖い所じゃ無くて、途中の山や森に盗賊が居る所が在るの、でもカエル君が一緒だから大丈夫だよ」


⦅僕が? あぁ、肺に水だね⦆

「頼りにしてるよ!」

⦅任せろ!⦆


「イッちゃん? ケロケロってカエルとまるで会話してるようだな」

「まるで、じゃ無いよ、確り会話してるよ」

「良いペット拾ったな、旅が無理なら最果ての町に何時でも帰って来い」


 ゼンってオヤジ、本当にイチの事が心配なのだろう、このままじゃ着いて来そうな感じ、イチはギルドを出て、商店街に向かってる。





 イチは雑貨屋で干し肉や乾パンを買って、最果ての町を旅立った。



 何も問題無く5日が過ぎた。


「カエル君、あそこのイノシシ見える?」

「以前のよりチョッと小さいか?」


「肺に水をやって」

「……入れたよ!」

 イノシシは、苦しいのか逃げようとして、ダダッと走ってバタッと倒れた。


「このキズ無し毛皮も銀貨10枚で売れる! カエル君ありがとう!」


 イチがお礼言ってるけど、毛皮を剥がし解体、骨でスープを作り肉を焼いたり煮たりして、美味しい食事作ってくれる、こっちがお礼言いたいよ。

(本当イチは良い相棒だよ)



「旨そうな飯食わせろ! ついでに剣と金を寄越せ!!」

 3人のオヤジが現れた。

⦅……イチ? こいつら盗賊か?⦆

「あぁ盗賊だ!」

⦅盗賊は殺って良い?⦆

「肺に水! 全員やって!」


 僕は盗賊3人の肺に水を入れた。


 喉を掻きむしり苦しがって、3人の盗賊は呆気なく倒れた。


「イチ? 死体に何してる?」

「武器に防具、金や持ち物奪ってるの」

「ん? 人の持ち物奪うのは、悪い事じゃ無い?」


「盗賊や山賊に海賊、悪人を倒すと持ち物全て奪って良いの」

「大荷物に……あぁイチは収納袋を持ってた」


 イチは盗賊の持ち物、全て収納袋に入れてる。


「こいつらのアジトが近くに有るはず、全員退治してお宝奪って行くカエル君、宜しく頼むよ!」




 イチは森の奥に向かってる、僕はイチの肩の上、嫌でも一緒に向かう。


「イチ? そっちに盗賊のアジトが在るの? 巨木しか無いよ?」

「3人の盗賊はこっちから来た」



 暫く森の奥に向かうと砦? が在った。僕にも分かる盗賊の気配って言うのか? 大勢の人間が居る様な? ボロい使われ無くなった砦跡に住み着いた? そんな感じの盗賊のアジトだった。


「カエル君、盗賊は50人ほど居る、順に肺に水やってくれる」

「任せろ!」


 ピョンピョンカエル跳びしながら、僕はアジトにはいって行き、盗賊の肺に水を入れて行った。

 苦しみながら、バタバタ倒れる仲間に、訳が分からず右往左往する盗賊達、小さな僕には気付いて居ない。



「イチ、終わったよ」

「カエル君はヤッパ凄いよ!」


 盗賊の武器庫に宝物庫の中身を回収しながら、イチが誉めてくれた。


 僕には、宝物庫はお金以外はガラクタに見えた。

 お金も銅貨や銀貨が無い、全て金貨ばかりだった。


 金貨って初めて見るよ! 日本でも……日本には銀貨すら無かった、昔は鳳凰とか稲穂の100円が銀貨だったそうだが、今では全て白銅に銅や真鍮それにアルミのお金だ…こんな事は覚えて居るのに自分の名前も忘れてる。


「武器は大量だと、買い叩かれるし、収納袋もこれ以上入らん、勿体無いが置いて行くか」


 と言いながら笑うイチは、チョッと悪人面だった。

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