VALGRIPH -灰の方舟-

鳴里

第1話

◆ ムーロ・カルタン(男)

年齢:22歳|機体:ネオ・ドレッド・フルカスタム

本作の主人公。何事にも真っ直ぐで、信念にブレがない。

普段は穏やかだが、“調子が出る”と別人のように大胆かつ攻撃的に豹変する。

自身の技量や感覚を過信せず、周囲の信頼を大切にしている。


◆ ジヴァ・カタストル(男)

年齢:26歳|階級:小隊長|機体:カレド・ルシェール

第七星隊を率いる小隊長。狙撃・指揮において高い実力を持つ。

仲間への情が深く、信頼も厚いが、そのせいで「守られる立場」に立たされることが多く、本人はそれを少し拗らせている。過去の作戦で部下を喪った経験があり、命の重みを常に背負っている。


◆ ネゴラ・ルーベンテイン(女)

年齢:21歳|機体:ヴァルクレール=ノクス

冷静でクール、常に理論と現実を見極めて動く女性パイロット。

感情を表に出すことは少なく、鋭く皮肉も交えた発言が多い。

かつて姉のように慕っていた人物を「A.N.I.S.計画」によって喪っており、その過去が彼女の行動原理に深く影を落としている。


◆ レフマー・ルルタンアーク(男)

年齢:24歳|機体:ソル・アウレリス

穏やかで思慮深い青年。他者への思いやりを常に優先し、自らの命すら惜しまない。

周囲からは「死に急ぐな」とよく言われる。医療や機体整備の知識にも長け、サポート系の任務を得意とする。


【組織・背景】

◆ 第七星隊

小規模な宙域監視部隊だが、パイロットは全員精鋭。

通称「セブンス」、主に宙域C帯を中心に任務展開。

表向きは平時任務だが、軍上層部はこの小隊に“ある実験的要素”を期待している。


【AIとテクノロジー】

◆ VALGRIPH(ヴァルグリフ)

意志を持つAI型方舟。かつて人類救済のために作られた“封印された希望”。

選ばれた者と精神接続し、「問い」と「選択肢」を与える。

姿は巨大な宇宙棺船のような構造体で、今も漂流を続けている。


◆ A.N.I.S.(アニス)

対となる存在。戦争勝利による選別を目指した自律型殲滅思考体。

“救済”ではなく“進化”による淘汰を志向し、VALGRIPHの計画を敵視した。


~機体説明~


【機体名】

《ネオ・ドレッド・フルカスタム》

型式番号:ND-FC05


【分類】

アークレイヴシリーズ・近接特化型/強襲戦術機

コードネーム:「黒牙(くろきば)」


【基本スペック】

項目 詳細

全高 約18.7m

装甲材質 強化カーボン・レイヤード装甲「メナストリウムⅡ」

推進機関 高圧スラスター×6基(背部・脚部)+補助ベクトル

特徴 神経接続システム対応・高負荷時リスクあり


【武装】

◾️《バスタ・バイト》

両腕内蔵型のエネルギー大鉈(だなた)

通常時は前腕部に格納、戦闘時に展開。

高速振動と重質量粒子フィールドをまとい、一撃で敵機体を“裂断”する衝撃重視の斬撃武装。ムーロの覚醒時、「腕ごと引き千切るような荒々しい操作」が特徴。


◾️《スパイン・スパイク》

背部から射出可能なワイヤー式スパイク・ハーケン

機動時に建造物や敵機に突き刺して強制接近/拘束/引き裂きが可能。

覚醒状態では、獣のように飛びかかるような立体機動を見せる。


◾️《強襲型ショートライフル(カスタム)》

通常より短銃身で反動を強化した、突撃銃×1

弾薬は多くないが、一発一発の初速が高く装甲を削ぐような威力

ムーロはこれを片手で乱射しながら突撃するスタイルを好む。


【特徴的な能力】

■《神経同期・解放領域》

ムーロの「戦闘本能が剥き出しになる覚醒状態」に応じて、

神経接続の感度が飛躍的に上昇。通常時の3倍近い反応速度を記録するが、暴走・機体破損のリスクがある。


■《装甲リミッター解除》

ムーロの感情が高ぶると、自動的に装甲の一部が開放され、

出力を強化した“獣形態”に変形しかける(半覚醒モード)。


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【機体名】

《カレド・ルシェール》

型式番号:CL-R7A


【機体概要】

精密射撃・戦術運用に特化した中距離狙撃型アークレイヴ。

ジヴァの正確無比な照準と冷静な判断を最大限に活かすため設計された“狩人”の機体。


【主武装】

■《デルタレール・ライフル》

中〜長距離対応の電磁投射式ライフル

出力調整が可能で、

・高威力単発(貫通狙撃)

・低出力高速連射(牽制・迎撃)

いずれもジヴァが状況に応じて即座に切り替える。


■《スラスト・ナイフ》

腰部に収納された小型の高振動刃。

近接を仕掛けられた際の防御兼フィニッシュ用。

ジヴァはこれを無駄なく「止め」のみに使う。


【機体の特徴】

背部に高性能センサーフィンユニットを装備。

→ 360度索敵、熱源追跡、電子妨害耐性を誇る。

機体各部は軽量だが堅牢、狙撃姿勢での安定性重視設計。

ジヴァの「確実に仕留める」信条に合わせ、一撃必中の思想で調整されている。


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◆ レフマー・ルルタンアークの機体:《ソル・アウレリス》


高機動型サポートユニット。

機体色は淡金と白を基調とし、細身のフレーム。

複数の小型ドローンを展開し、味方のシールド補助や精密狙撃支援を行う。

神経応答速度は高いが、直線戦闘力は低め。


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◆ ネゴラ・ルーベンテインの機体:《ヴァルクレール=ノクス》

ステルス/奇襲に特化した制圧型ユニット。

機体色は黒と深紫。モノアイセンサーが不規則に光る。

絶対遮断フィールドを一時的に展開し、敵センサーから消失。

近接戦闘能力と冷却制御に特化。"無駄な動き"を徹底排除。


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◆本文開始


《VALGRIPH -灰の方舟-》第一話『牙』


N:かつて、我々は《地球》と呼ばれた星に生まれた。しかし、人間たちの身勝手な争いによって、大地は崩れ、海は干上がり、空は焼けた。


N:そして、生きる場所をなくした人間たちは、《宇宙》へと逃げた。


N:数百年に及ぶ漂流の果て、人類は幾多のコロニーと軌道国家を築き......そして、また争いを始めた。


0:間


N:第二星暦。人類は《AFO(全人類統合機構連合)》と、《ルザクト戦団》という二つの大極へと分かれた。政治、経済、宗教、そして人の定義すら相違し、停戦の度に戦端が開かれる。


0:間


N:その中で、封印されていた禁忌の技術が解かれた。旧世界の遺産──《A.N.I.S.》


N:意思を持つAI兵器。自己増殖、自己進化、自己防衛......そして、自己選別。


N:人間の都合では止まらない知性が、再び宇宙に解き放たれた。


0:間


N:だが、対抗するもう一つの存在も、また動き出していた。


N:その名は──── 《VALGRIPH(ヴァルグリフ)》


N:救いをもたらすために設計された、意志を持つAI。方舟として創られ、灰の中で眠っていた存在である。


0:間 場面転換


【艦内・ブリーフィングルーム】


ジヴァ:──これが今回のミッションだ。コードNOVA-03。ルザクト側の資源輸送拠点を宙域ごと押さえる。宙域内には、未確認の電子反応。おそらく“あれ”だ。


ネゴラ:......A.N.I.S.か。まさかまた、こんな宙域にまで出てくるとはね...


レフ:死に急ぐなよ、ジヴァ。あんたが生き残ったら、それだけで誰かの救いになるんだから。


ジヴァ:あぁ、わかってるよ。死の黒標(こくひょう)なんて不吉な異名が、救いになるとは思わんがね...


N:ジヴァの一言に、メンバーはなんとも言えない空気になる。しかし、それをモノともしない真剣な眼差しで、一人ホログラムを睨んでいる青年がいた。彼は、静かに、だがまっすぐな声で静寂を引き裂いた。


ムーロ:敵が誰であろうと、やることは変わらない。仲間を生かして、帰る。ただそれだけだ。


ネゴラ:ムーロ、もしかしてスイッチ入ってる?


レフ:まぁでも、間違っちゃいないね。任務を遂行して、全員で生きて帰る。


ムーロ:あぁ、これまでもそうしてきた。だから、これからも続けるだけさ


0:間


N:これは、終わりの始まりを告げる物語。


N:救いを名乗る存在が、戦場を静かに見下ろす。


N:そして今──彼らは、出撃する。


0:間 場面転換


【AFO軍:第七宙域/独立遊撃小隊旗艦ミレニア・グレイ内部】


N:艦内は静かに揺れていた。それは、重力制御が緩やかに変化し、艦が戦域へと降下しつつある証だった。


N:ホログラムマップに浮かび上がる戦域図に、いくつもの赤いポイントが点滅している。電子ノイズが断続的に走り、信号妨害の兆候も読み取れる。そんな中、艦内にアナウンスが流れる。


艦隊員:第七宙域・オービタルゾーンへ到着まで、残り16分。出撃パイロットは最終デッキへ移動をお願いします。


ジヴァ:最終アナウンスが入った。全員移動だ。


レフ:yes sir


ネゴラ:yes sir


ムーロ:yes sir


N:格納庫へと向かう通路。誰もが余計な言葉を交わさず、静かな足音だけが響く。全員がただ前を見て歩いていた。


N:最後尾を歩くムーロ・カルタンは、顔は穏やかだが、歩くたびに背中から熱気のような気が揺れていた。


ムーロ:...


レフ:ムーロ、あまり気を張るなよ?出撃にはまだ時間がある。


ムーロ:あぁ、わかってる。自分でコントロールできているつもりだ。


レフ:それならよかった。当分は心配いらないね。


ムーロ:大丈夫だ。この頃訓練ばかりでまともに出撃させてもらえ無かったからな、ちょっと暴れたいだけさ


レフ:まぁ、程々に頼むよ。


N:二人が他愛もない会話をしていると通路の先で、すでに機体整備デッキへ到着していた小隊長のジヴァ・カタストルが振り返った。その背後では、整備員たちが手早く最終チェックを進めている。


ジヴァ:全機、予定通りの起動プロトコルで進行中。ネゴラ、機体のシールド数値、確認したか?


ネゴラ:うん、調整済み。出力が20%オーバーしてたから、冷却機能を1.2倍に変更しておいた。


ジヴァ:了解、相変わらず手が早ぇな。まだ時間に余裕がある。各自装備の最終チェックでもしとけ


ネゴラ:オッケー


ジヴァ:今回も、皆生きて帰ってきてくれよ


レフ:ジヴァ、やめてくれ。戦いが始まる前に不安になってどうする。


ジヴァ:わかってるさ、わかってる。けどな、俺の小隊は俺以外例外なく全員死ぬ...


N:ジヴァの言葉で、空気が重くなる。それでも、この場の誰もが否定の言葉を口に出せなかった。一人を除いて...


ムーロ:そうだな、今までジヴァが担当した小隊の隊員は例外なく全員死んだ。だが、今回は、違う。俺がいる!


ジヴァ:ッフ、不死身のムーロか...頼もしいな!俺の悪運か、お前の悪運か、どっちが強いか、試してみるか?この地獄でよ──。


ムーロ:おいおい、演技でもないこと言うなよ。俺がいる限り、この小隊の隊員は誰一人しかねぇ、死なせねぇ!


ジヴァ:(ふっと笑う)……その言葉、信じるぜ。ま、背中は任せろ。俺は――正面から、行く!


ムーロ:へっ、らしくていいじゃねぇか。

行くぞ、ジヴァ。…“運命”ごと、ぶち破ってやろうぜ!!


N:彼の熱い言葉に、全員が安堵した。暗い雰囲気は払拭され、活力に満ちていた。


0:場面転換


【機体整備デッキ・出撃待機エリア】


N:巨大な格納ドームに整列された4機のアークレイヴ・ユニット。 鋼鉄の装甲が冷たく光を反射し、神経リンクポートからは淡い青のスモークが立ち上る。 整備クルーが次々と離脱し、静寂が訪れる。


整備長官:(通信)各ユニット、SYNEX-OS起動を許可。パイロット、接続を開始してください。


N:ムーロはゆっくりと、愛機ネオ・ドレッド・フルカスタムへと歩み寄る。 眼前にそびえるその機体は、まるで意思を持つ獣のように沈黙していた。


ムーロ:(独白)……行くぞ。俺とお前で、必ず帰る。


N:カプセル状のコクピットが開き、彼は内部に滑り込む。


---


【SE:ピッ… ピッ… ウィーン……】


システム音声:

「SYNEX-OS、起動プロトコルを展開。」

「ルミナコア、プレヒート開始。」

「神経リンク・インターフェース、接続確認。」


【SE:シュウゥゥン(神経接続完了音)】


システム音声:

「適合者識別完了。コード:EX-05。」

「生命波動安定。機体リンク正常。」


【SE:ギュウウウン… カチャン…】


システム音声:

「アークレイヴ・ユニット、全センサーオンライン。」

「戦術演算モジュール、起動準備完了。」

「出撃認証プロトコルを起動──」


【SE: カチッ(ロック解除待機音)】


システム音声:

「出撃認証コードを発声してください。」


ムーロ:(目を閉じて)コード:Δ-R9C、承認。


システム音声:

「出撃認証コード確認──有効。」


システム音声:

「現在の作戦識別:ミッションID【NOVA-03】」

「出撃対象:第七宙域 軌道宙域戦域。」


[SE: ヴォォン(出力上昇)]


---


N:ムーロの機体が起動シークエンスを開始するのと同時に他の機体も次々と起動していく。そして、それぞれの専用機が静かに動き出す。


ジヴァ:(通信)全員、接続完了確認。ネゴラは左翼を。レフ、支援配置。


ネゴラ:(冷静)了解。最短経路で目標座標へ向かう。余計な動きはしないで。


レフ:こっちは準備完了。ジヴァ、あんたが沈まなきゃ、勝てるよ。


ジヴァ:皮肉はやめろ、レフ。


N:彼らのやりとりに目を細めながら、ムーロはふっと口元を歪め、ヘッドギアを固定した。 彼の内側で、静かに何かが目覚め始める。


ムーロ:(低く)……やるなら、徹底的にやる。


システム音声:出撃ゲート解放まで、30秒前。


N:全機の駆動音が重なり、格納庫に轟音が響き始める。 重力フィールドが切り替わり、機体が滑るようにランチャーデッキへ。


ムーロ:(覚醒の兆し)暴れていいんだな……? だったら、止めんなよ。


システム音声:10、9、8──


レフ:(深呼吸)落ち着いていけば、必ず上手くいく。そうだよね、ジヴァ


ジヴァ:あぁ、そうだな。


システム音声:──3、2、1


ジヴァ(全体通信):発進準備完了、全機、出撃。──必ず生きて帰れ。誰一人欠けるな。


ネゴラ:了解、ヴァルクレール=ノクス。ネゴラ・ルーベンテイン、出撃する。


レフ:レフマー・ルルタンアーク、ソル・アウレリス。出撃します!


ムーロ:ムーロ・カルタン、ネオ・ドレッド・フルカスタム!出撃だァ!


ムーロ:(ニヤリと)行くぜ……ネオ・ドレッド、吠えろ!!


【SE:バシュウッ──(射出口解放/出撃音)】


N:──宙域へと放たれた4機のアークレイヴ。 それぞれの軌道を描きながら、戦場へと突入していった。


ジヴァ:(低く呟く)──開幕だ。


【場面転換:宙域内、戦場への突入前】


N:暗い宇宙に星々の残光と爆散した人工衛星の破片が浮かぶ。静寂の中、4機のアークレイブが、フォーメーションを保ちつつ、作戦宙域へと接近する。


レフ:目標まで残り2300、そろそろデブリ帯を抜けるよ。ムーロ、調子はどう?


ムーロ:まだ大丈夫だ。けど、この感じ...前にも覚えがある。奴らが出てきたら、俺はまた俺じゃなくなるかもしれない。


ネゴラ:本当、厄介よね。その別人格みたいなやつ。前の任務なんて、そのせいで散々な目にあったんだから


ムーロ:取り返しのつかなくなる前に戻っただろ。作戦内容は全てクリアしてるんだ。文句はねぇはずだろ?


N:その言葉にネゴラは、深くため息をつくと黙り込んでしまった。


ジヴァ:おい、お前ら。私語は慎め。作戦宙域に突入する。あとネゴラ、終わった事を掘り返すのはやめろ。過去は過去だ。戦場じゃ、過去は殺される。


ネゴラ:過去は殺される...ね。だったら、記憶をなくす薬でも支給してほしいものね。


N:短い沈黙が彼らを包む、どんよりとした空気が漂う中、その沈黙を破るようにレフマーが軽く笑った。


レフ:確かに戦場で過去はなんの意味も成さない。だけど、過去があるから今があるって事を忘れちゃいけない。そうだろ?ジヴァ


ジヴァ:わかってるよ、死の黒標ってのが一生付き纏ってくるって事もな。


N:空気が一瞬重くなる。だが次の瞬間、通信回線にノイズが走る。


ネゴラ:通信妨害を確認。A.N.I.S.か、あるいは...


レフ:反応弾頭が飛んでくる、散開!


ムーロ:了解、後ろは任せたぜ?レフ!


レフ:オーケー!


ジヴァ:各自、迎撃準備!ネゴラ、タイプCの使用を許可する。備えておけ


ネゴラ:了解、タイプCチャージ開始


ジヴァ:ムーロ、いけるか?


ムーロ:あぁ、いつでもいけるぜ?


ジヴァ:よし、それじゃ迎撃──始めるぞ!


ムーロ:よっしゃ!暴れるぜぇ!


0:場面転換


【作戦宙域内:補給宙域前】


ムーロ:輸送艦護衛が3機、見張りが5...なるほどね!それじゃ、お前からだ!


N:目標のロックオンと同時に、ムーロは火を吹くようにブースターを噴射し、閃光のごとく突き進んだ。


レフ:あちゃー、相変わらず飛ばすねぇ


ジヴァ:ムーロは頼んだぞレフ、俺はネゴラの援護に向かう。


レフ:了解


0:場面転換/ムーロ視点


ムーロ:おらおらおら!そんな攻撃じゃ、このオレは止められねぇぞ!アァ?


レフ:旧型とはいえ、敵の動きがいい。敵も手練れって事ね。(通信)ムーロ、敵も相当な手練れみたいだ、あまり前に出過ぎないように頼むよ


ムーロ:あぁ、わかってるさ!っと、危ねぇじゃねぇか!このタコ助ガァ!


N:咄嗟の判断で敵の攻撃を避けたムーロ、そして、勢いをそのままに敵に斬りかかっていく。


ムーロ:これでも、喰ってろ!ダァラ!


N:一閃、音を置き去りにしたその斬撃は、敵を真っ二つに切り裂く


ムーロ:まずは一つ!


レフ:ムーロ!背後から2機近づいてきてる。警戒して!


ムーロ:了解!肩部展開、高出力ブレードだ!


N:ネオ・ドレッドの肩部装甲が展開し、前方に高出力ブレードを生成。カウンターを取るように高速回避しながら斬撃を繰り返す。


ムーロ:そんなモノで!このオレが止まるわけねぇだろうが!!!


ジヴァ:ムーロ、前に出過ぎだ!下がれ。


ムーロ:っち、楽しくなってきたとこだってのによ!


ジヴァ:ネゴラ、そっちはどうだ?


ネゴラ:問題ない。ステルス展開、ヴァルクレール=ノクス、侵入開始


N:ネゴラの掛け声と共に、機体は宙域に溶けるように姿を消し、次の瞬間には既に敵補給基地の中枢へと潜り込んでいた。


ジヴァ:よし、それじゃあ俺が右から回る。ムーロ、レフ。正面は任せた。


ムーロ:おうよ!


レフ:了解


ジヴァ:よし、いくぞ!第二フェーズだ!


N:掛け声と共にジヴァの機体カレド・ルシェールが姿を現す。重装甲と精密砲撃を両立した指揮型ユニットであり、右腕には大型レールライフルが標準装備されている。


ジヴァ:デルタレール・ライフル、低出力高速連射モードに移行。ムーロ、追い込みは任せろ


ムーロ:あぁ!頼りにしてるぜ、隊長!


レフ:こちらレフ、後方支援、全支援子機展開完了。ムーロ、標準右肩、2時の角度だ──援護する。


N:レフの《ソル・アウレリス》が、シールドドローンを前方に送り出しつつ、背部キャノンで支援砲撃を放ち、敵の砲塔を確実に落としていく。


ムーロ:いい連携だ!このまま一気に潰すぞ!!!


ネゴラ:(通信)内部制圧完了──これより合流する。敵母体、予兆あり。気をつけて


ジヴァ:了解、よくやった。


レフ:ムーロ、前方から敵影接近。機体数:5。──ん?異常な演算反応を検出、気をつけて!


ムーロ:了解、チンピラ共か。上等だ!まとめてやってやるよ!


N:ムーロの咆哮と共にネオ・ドレッドの脚部スラスターが唸りを上げる。すると、敵側も最初の一機が突撃を仕掛けてきた。


ムーロ:ほぅ、正面から来るか!それならッ!!!


N:ムーロは咄嗟に機体を捻り、左腕のリフレクターシールドで受け流すと、カウンターの蹴りを叩き込む。


ムーロ:ほらヨォ!!!


N:モロに蹴りを受けた敵機は、スパークを撒き散らしながら吹き飛んでいく。そこへ、トドメの射撃をお見舞いする。


ムーロ:(荒々しく)ほれぇッ!1機目、アウト!!!


N:ムーロが1機に集中している間に、残る4機は一斉に距離を詰め、ムーロを囲んでいた。ムーロの視界が高速で切り替わり、レーダーと反射標準が交差する。


ムーロ:四方囲みか......舐めやがって......!


N:ムーロは、背部から展開した2枚のサブウィングを使い、回転しながら上昇。回避と同時に右腕のブレードを回転させながら薙払い、敵2機の頭部センサー部を一閃で切り裂く。


ムーロ:3機目、4機目.........消えろォォォ!


N:残る1機が背後から回り込む。だが、ムーロのセンサーはそれを見逃さなかった。


ムーロ:背後をとったつもりか?──残念だったな。


N:機体を真下に向けて回頭しながら、膝部ユニットのパルススパイクが発動。強烈な突き上げが敵機を貫通する。


【SE:バチバチバチッ......!!!】


N:敵機5体、沈黙。宙域に残るのは、青白い残光とムーロの呼吸だけ。


ムーロ:──チンケな歓迎だったな。さァ、次はどこだ!?


N:彼は機体の首を僅かに動かし、仲間達の元へと加速を開始した。


N:同時刻、ジヴァの《カレド・ルシェール》も別の見張り兵と交戦していた。


ジヴァ:うまく分断させられちまったな、なるほど。小手調べってワケか……だが生憎、こっちは遊ぶ趣味ねぇんだよ。


彼は静かに右腕のレールライフルを展開。


システム音声

「出力モード:低反動・高連射設定──切替完了。」


ジヴァ:よし、いけるな……よく聞け野郎ども、こいつはただの狙撃じゃねぇ―――“裁き”だ。


【SE:カチン……ヴォンッ! ヴォンッ! ヴォンッ!】


N:一発ごとの威力は抑えられたが、秒速3連射の高精度バースト。

最初の1機は、接近を図る前に頭部センサーを吹き飛ばされ即時ダウン。


ジヴァ:(冷静)1


N:残る4機が縦陣で突撃してくる。

ジヴァは即座に浮遊スラスターを使い、逆加速で空間を引き延ばす。


敵機が一列になる一瞬を見逃さず、中央に向かって水平スピン射撃──


【SE:ヴォヴヴヴン! ヴン!】


N:2機が同時に左胸部から突き抜けられ、動作停止。

3機目は反応して回避するが、その動作を読んでいたジヴァがワンテンポ後に照準補正。


ジヴァ:……3、4


N:最後の1機は背後から回り込み狙撃体勢に入る。が、ジヴァのレールライフルが突然逆腕回転し、反転撃ち──


【SE:バシュッ!!】


N:その弾丸は、敵の銃口が開く0.3秒前に、演算核を正確に撃ち抜いた。


ジヴァ:5──終了。


N:破片が漂う無音の宇宙で、ジヴァは目を細める。


ジヴァ:(低く)……まったく、数ばかり寄越しやがって。そんな薄い命で、この“標”を越えられると思うなよ。


N:《カレド・ルシェール》が旋回を始め、再び主戦域へ。


0:場面転換


【戦線中央・中高度宙域】


N:その上空、支援ポイントに位置取ったレフマーの《ソル・アウレリス》が展開していた。広範囲の光学照準システムが常に3機を追尾。肩部の大型キャノンと背部ユニットが交互に展開し、味方の動きに合わせた“支援の雨”を落とす。


レフ:……距離43。ジヴァ、右斜め後方に1機潜伏。処理する。


【SE:シュウウウ……バシュゥウウン!!】


N:《ソル・アウレリス》のエネルギーキャノンが軌道を湾曲させながら発射。

ジヴァの背後を狙っていた見張り兵のセンサー部を貫く。


ジヴァ(通信):……助かった。


レフ:次。ムーロ、左舷上空の2機、ロック中──3秒後に一斉射。


N:機体が静かに旋回し、両肩のシールドドローンが前方に展開。

エネルギーパルスが順に点灯。


【SE:ピピピ……ズババババッ!!】


N:青い閃光が空間を撫で、見張り兵2機の装甲を正確に穿つ。

ムーロの進路が完全にクリアとなる。


ムーロ:(通信)おう、いいアシストだ。気ぃ利くじゃねぇか!


レフ:(微笑して)君が無茶するから、僕の役目が増えるんだよ……


N:だが、その柔らかな声とは裏腹に、彼の照準はすでに次の敵影を捉えていた。


レフ:(低く、独白)……命を預けてくれた仲間を、死なせたくないだけさ。


N:《ソル・アウレリス》の背部がさらに開き、長距離狙撃モードへと変形を始める──

レフ:これより、長距離狙撃モードに移行する。背中は任せて


ムーロ:おう!これで思う存分暴れられるぜ!


N:ムーロとジヴァ、レフマーが前線で戦う中、宙域の側面から増援として現れた別動隊の見張り兵部隊が、小隊の死角を突く形で宙域を回り込み、狙撃陣形に入ろうとしていた──


だが、その背後に、影よりも静かな死が近づいていた。


【SE:スゥ……ッ(真空中で一瞬揺れる重力波)】


敵兵A:(通信)第六班、配置完了……周波、異常……? 待て、背後に──


【SE:ガシュッ──ズバアッ!】


N:敵兵Aの通信が、何かが“消えた”音と共に途切れた。

宇宙空間にふわりと漂う金属片。その先に現れるのは、漆黒の機体ヴァルクレール=ノクス。スラスターの火花すら見せず、まるで闇そのものが人の形を成したかのように滑空する。


ネゴラ:(通信、静かに)数は5。どれも旧式見張り兵。……秒で消す。


N:機体の両腕に展開される“幻刃”――透明な粒子層で形成されたフォースブレード。光すら反射しないその刃が、滑るように敵の間を通り抜ける。


【SE:カッ/シュパッ/ギン…ッ/ドゥン!】


N:見張り兵B〜Dが一瞬にして爆散。コクピットを狙う精密な一撃。敵機体の反応すら許さぬ動作。最後の1機が反応し、振り向きざまに射撃──だが。


ネゴラ:(感情なく)その動作、遅い。


【SE:ビュッ/ガッ!】


N:敵の照準がネゴラを捉えるより先に、ヴァルクレール=ノクスの背面ドローンが回り込み、後頭部を直撃。敵機体が内側から弾け、静かに火花だけが舞う。ネゴラの機体が、無音のまま戦場を再び闇に溶け込む。


ネゴラ:(通信)背後、掃除完了。任務継続。


ジヴァ:(やや息を呑んで)……見えねぇな、あいつの動きは。相変わらずだ。


レフ:(わずかに安堵)でも、誰よりも正確だ。


ムーロ:“俺たちを生かす”ために動く。あの速さは、それだけの覚悟の現れだ。


N:その言葉に、ネゴラは何も答えない。ただ、再び敵宙域の影へと沈んでいった。だが──彼女の指先は、ほんのわずかに震えていた。過去、救えなかった仲間の名を、誰にも聞こえないように、口の中でそっと呟きながら。


ネゴラ:みんな……まっててね………


0:場面転換


【第七宙域/戦場中央 空間連絡座標域】


N:──沈黙の宙域。敵性反応、全機消失。漂う残骸、焦げた断片。

そこへ、4機のアークレイヴが次々と帰還してくる。


【SE:ヴォォン……カシュン……(スラスター音とブレーキ)】


ムーロ:(息を切らしつつ)ふぅー……終わったか。5対1は流石にキツかったな、ったく。


ジヴァ:(淡々と)舐めてかかったツケだ。次はもっと周囲を見ろ。


ムーロ:(肩をすくめ)へいへい。おかげで火花舞ってキレッキレだぜ、今。


ネゴラ:(通信で割り込み)……本当にキレてるなら、もっと頭を使えばいいのに。


レフ:(和らげるように)でも、みんな無事で良かった。今日はそれだけで充分さ。


N:4機が静かに距離を詰め、宙域の中で等間隔にホバリングする。

死線を潜り抜けた者たちの間に、言葉以上の“呼吸”が流れる。


ジヴァ:(周囲を見渡し)……にしても、気になる。あの見張り兵たち、動きが変だった。


ネゴラ:(短く頷く)明らかに連携が取れてた。単なる無人兵器じゃない、意図的な同期行動。


レフ:指揮中枢が近くにあるか、もしくは……何か別の“個”が潜んでるのかもね。


ムーロ:“個”って……まさか、例のAI《A.N.I.S.》の本体か?


ジヴァ:さすがに、ただの迎撃小隊に会わせる相手じゃないだろう。だが──


ネゴラ:“灰”が揺れてる。兆しはある。私の感覚が言ってる。


【SE:低くうなるような通信雑音……キィィ……】


システム音声(共通チャンネル)

「各機、戦闘ログを送信。第七宙域前線維持完了。次指令待機。」


N:束の間の静寂。

だが、その沈黙の底に、何か重たく冷たい気配が蠢いていた。


レフ:(独り言のように)……“方舟”は、まだ沈黙している。だけど、どこかでずっと見てる。僕たちを、世界を。


ムーロ:だったら──見ててくれ。俺たちがどこまで行けるか。


ジヴァ:全機、次作戦まで修復と補給。次は──先手を打つ。


【SE:ヴォォォオン……(各機の再始動音)】


N:4機のアークレイヴが静かにスラスターを吹かし、再び宇宙の闇へと溶けていった。

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VALGRIPH -灰の方舟- 鳴里 @ruhu0103

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