第2話
名前を呼ばれてから数日、私はまるで宙を歩いているような気分だった。
工場の仕事は相変わらずで、上司の叱責や同僚の冷たい空気に押しつぶされそうになるけれど、心のどこかにあの瞬間が灯っていた。
“秀美さん?ありがとう”
その声が、耳に残って離れない。
アーカイブを何度も巻き戻しては、聞き返してしまう。
けれどその一方で、現実の自分があまりにもつまらなく感じられて、怖くなった。
「これが、私の人生?」
ふと鏡を見て、そうつぶやいた。
──無表情。
──地味な服。
──誰にも気づかれないような毎日。
それでも。
たった一度、名前を呼ばれただけで、私はこんなにも生きる希望を感じている。
それって、もう恋なんだろうか。
⸻
ある晩、配信を見ながらふと思った。
コメント欄の中には、同じように名前を呼ばれて嬉しそうな人がたくさんいた。
リスナーの数は増えていて、私のコメントも以前ほど読まれなくなった。
七瀬にとってはいいことだが秀美にとっては寂しいことだった。
どーにか七瀬を振り向かせたいギフトを投げてみた!七瀬は「秀美ちゃんギフトありがとう」
その言葉が嬉しくて秀美はギフトを投げては七瀬に名前を呼んでもらっていた。
毎日のようにギフトを投げた気付けば生活ギリギリになってまで投げるようになっていた。
どうしよう、、、今月もう投げれない、、、
食費すら節約して電気もすぐ消したこんなにしても七瀬には届かない
秀美は辛かった気付けば七瀬なしではいられなかった。
私なんて、きっと、数ある中のひとり
そう思えば思うほど、胸がきゅっと締めつけられる。
それでも、彼の声を聞くのはやめられなかった。
声だけでこんなにも、誰かに惹かれることがあるんだと知ったから。
ふと、彼のプロフィール欄を開いた。
そこには、DMのアイコンが静かに並んでいた。
(送ってみたら、どうなるんだろう)
指が震える。
怖い。返事がこなかったらどうしよう。
逆に、返事が来たら――期待してしまいそうで、もっと怖い。
だけど。
(このまま何もしなかったら、きっと後悔する)
私は、スマホをしっかり握りしめ、深呼吸をしてから打ち始めた。
返ってこないだろう。見てくれるかさえわからない。それでも気持ちを伝えたかった。
七瀬さんへ
七瀬さんのおかげで今日も生きれてます。
私、七瀬さんのこと本当に大好きです。
世界一大好きです。愛しています。
迷惑だったらごめんなさい。
七瀬さんの特別になりたいです。
きっと返ってこない。
そう想いながらも返って来てと願っていた。
その日携帯を握りしめていたが鳴ることはなかった、、、
朝になって秀美はまたいつもと同じ仕事に行く準備をしていると携帯が鳴った。
七瀬からだった
仕事に行く準備も忘れ通知を急いで開いた。
秀美ちゃんへ
DMありがとう。本当は返しちゃいけないんだけど素直に嬉しかったから返すね。
気持ちは嬉しいけど今は特別な人を作るつもりはないんだ。
Vライバーになったら特別な人は作らないて決めてるんだ。
だから気持ちだけ貰う。秀美ちゃんの気持ちは嬉しいよ。
秀美は嬉しくもあり悲しかった。
やっぱりそうだよね、、、
でも、DMは返してくれた私の想いは届いたんだ
秀美はとりあえず仕事に向かった!今日はなぜだがウキウキして仕事が出来る
早く終わって七瀬の配信を観たい、、、
気付けば夕方もう仕事が終わる
七瀬の配信が観れる時間ドキドキしてイヤホンを耳につけ七瀬の配信を観た!
七瀬はいつもと同じだった
今日も「秀美ちゃんお疲れ様」そう言ってもらえる幸せなひととき
でも、最近七瀬ファンが増えてきた。
「七瀬くんみかりんにも投げちゅーして」
ガチ恋勢というやつらしいー
七瀬は「女の子にはしなーい」とニコニコして言う
秀美はホッとしたそんな姿耐えられないからだ。
秀美はいつも通り七瀬の気を引く為にギフトを投げる
「秀美ちゃんいつもギフトありがとう」
七瀬は優しく微笑む
秀美は「ほんの気持ちだけですが」と打つと
七瀬は「その気持ちだけで十分嬉しいよ」と感謝を述べた。
秀美は七瀬の配信が終わるまでずっといる
他のリスナーとも親しくなっていた
秀美はみんなみたいに七瀬を困らせたくない
ガチ恋勢だろうが私は特別でいたい
七瀬の1番のファンでいたいのだ。
今日配信終わったら七瀬にDMを送ろうと秀美は決めていた。
七瀬が「じゃあみんなまた明日ねー」
「また明日も頑張ろー」
そう言って配信が終了した。
秀美は七瀬にDMを打った
七瀬さんへ
DM返ってくると思ってなかったので嬉しかったです。七瀬さんの邪魔をしないので好きでいても
いいですか?
ドキドキしながら送信した。
また携帯を握りしめて返信がないか待っていた
そしたら今度はすぐに携帯が鳴った
秀美ちゃんが辛くないなら好きでいていいよ。
DMのやりとりは2人だけの秘密だよ。
秀美は嬉しかった。2人だけの秘密それだけで特別な気がした。
2人はそれからもDMを重ねた。
七瀬は秀美に過去のことを話した。
なぜVライバーになったのか七瀬は仕事で上手くいかなくて悩んでた時期があった。
だが誰にも言えなくてふとそんな時配信を観た
自分も誰かに悩みを言ってもらえるような近い存在になれたら誰かの明日になれたらと思ってVライバーになったと言う
秀美も七瀬に打ち明けた
仕事もミスばかり職場に打ち解けらる人がいなくて孤独を感じていた。そんな時七瀬に会って「お疲れ様」と言われ泣いてしまったこと
七瀬に気付いてほしくてギフトを投げていたこと
七瀬は「無理はして欲しくない」
「コメントは出来る限り拾うから無理しないで」
秀美も「これからは無理しない程度に七瀬さんを応援します」
「七瀬さんといつか会いたい」
七瀬「いつか会えたらいーね」
そんなやりとりをしていた。十分幸せだと思ったけどどんどん欲が出る。
七瀬に会いたいどこに行けば会えるか最近はそればかり考えるようになった。
帰り道綺麗なショーウィンドウに宝石みたいなケーキがたくさん並んでるお店を見つけた
初めてのお店だけど入ってみたい
秀美は勇気を出して入ってみたキラキラ宝石みたいなケーキだらけで見惚れてしまった
中から人が出て来た。「いらっしゃいませ」
聞き覚えのある声だ、、、「七瀬さん?」
店員もびっくりした顔をしていた。
「秀美です!もしかして七瀬さんですよね?」
七瀬ははにかんだ笑顔で「七瀬です」
「出会ったのが秀美ちゃんでよかった」
秀美「七瀬さん会いたかったです。」
秀美は泣き崩れてしまった、、、
七瀬は秀美の背中を優しくぽんぽんしながら優しく抱きしめてくれた。
七瀬はとりあえず奥にと部屋に通してくれた
七瀬はとりあえずお店をcloseにして秀美の元に帰ってきた。
「秀美ちゃん紅茶は好き?あとケーキもよかったら食べて」
秀美は少し落ち着き紅茶を飲んだ。宝石みたいなケーキも1口「美味しい」思わず声が出た
七瀬はニコニコしていた。
秀美「今、夢じゃないんですよね?現実なんですよね?」目の前にいるのが信じられなくて、、、
七瀬「僕も信じられないよ」まさか出会うなんて
こんな広い東京で、、、
七瀬は「改めて自己紹介を始めた24歳七瀬湊パティシエとVライバーをしています。」
秀美も自己紹介をした。
「桜秀美 24歳製造業しています」
今更だけどなんか照れ臭いね笑と2人で笑った
同い年だったのにも驚いた。
2人は初めてなのに初めてじゃないくらいたくさん話した。
もう暗くなっていた。そろそろ配信時間だと
七瀬は配信を始めた。
秀美は本当に現実なんだと改めて実感した。
七瀬の配信が終わった。
もう暗いから送るよと七瀬は言ってきた。
でも、秀美は帰りたくなかった。ずっと一緒にいたかった。「七瀬さんのことが大好きで愛おしいです。本当に世界一大好きなんです」
七瀬はニコニコしていた。
「七瀬さん今日帰りたくないです。」
七瀬は一瞬困った顔をしたが秀美を優しく抱きしめてキスをした。
いっぱいキスをした。肌を重ねてはお互いの体温を感じあった。
秀美は体温を感じながら何度も「七瀬さん大好きです。」と伝えた。
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