脱皮

残酷な家族ぐるみの芝居して母の操る糸にもがいた

冷戦の女らよそにいつだって父は永世中立国だ

兄弟に貧乏くじを引かされてアリバイとして祖父と囲碁打つ

じいちゃんに敬語で話す母なりて心の距離がいよいよ遠い

でこぼこの父の背中に貼られたるキャンバスめいた真白き湿布

足指で挟んで紐を引っ張れば豆電球が過去に灯りぬ

先回りしすぎる母と決別しワッフル編みのセーターを脱ぐ

セーターを解いて編んだまた編んだアンドロメダに夢を託した

綿雲を踏むよりもっとあやふやな足取りのまま綱渡りせん

痛い目にあったっていい懐を射貫き祈りて今脱皮せり