俺と彼奴の話

イズミノユビ

序章

「お前さ、良い奴だよな」

「何だよ急に。気持ち悪い。大体、良い奴ってんならお前だろ」

「俺は良い奴じゃないよ」


 十年前、基礎教育学校卒業の前日、そう言って微笑んだ彼奴の顔を、今でも夢に見る。次の日、彼奴は卒業式に現れず、行方不明になった。


 普段、見ることの無い新聞を見たのは、隣町で大きい火災があったと聞いたからだ。火事場泥棒が横行して、甚大な被害だと言う。

 その記事を見つける前に、俺は固まった。一面の下、広告欄に載っているその顔写真は、多少変わってはいたが、あの頃の面影を残したまま、確かに彼奴だったからだ。

 広告には、武器売りますと書かれていた。彼奴は、武器商人として名を馳せていた。

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