15話「もう役目は終わってしまったから」

ー二番目視点ー

真夜中の学園内の廊下で、七不思議の二番目は廊下の真ん中に突っ立っていた。

感じる霊圧を、聴こえる筈の声を、私は感じる。聴き取る。

…………何も感じない。何も聴こえない。

(……もう、低級霊や雑霊はいないようですね。)

(ならば、もうこの学園に留まる必要は無いでしょう。)

そうと知ったなら、さっさと行動に起こすべき。

…………時刻は2時を回り始めた。なら、明日の夜だ。



次の日の夜。どうせ来るだろうと思い、理科室の前に居座る。

「え、ちょ、うわ。」

「なになになになに。」

のんびりと歩きながら理科室へとやってきて、わたくしに驚いた七番目がそう言う。中々に良い反応だ。

「少しだけ、話したい事ができたのですよ。」

「…………ふ〜ん……じゃあこっちで話そうか。」

「えぇ。」

そう言われ、理科室の中へと入る…………いや、理科準備室へと入る。


見覚えの無い白い繭。そして、少し抑え気味な腐乱臭。

ここに霊が居座っていたのはこれが原因なのでは、と思ったが、そんな事は言わない。重箱の隅をつつくような、そんな野暮ったい事はしない。だって私は馬鹿ではないのだから。



「で、話って?」

彼は机の上に座ってそう言う。……私はその場所が定位置のように感じた。

「この学園の霊による霊圧は全て消えました。なので、私はこの学園を去ろうと思っているのですよ。」

「ふ〜ん……なら良いよ。」

「……あ、いつでも去っていいよ。」

「えぇ明日辺りには去ろうと思います。」

「うん。じゃあ、またね。」



私は理科準備室を出て廊下を歩く。

荷造りの必要は無い。ただ外に出るだけでいい。




私という1つの怪異の噂は、長年一人歩きをしている。

…………その場に留まる必要が無いせいだ。

荷造りはいらない。多分、世間話も別れの挨拶もいらない。そういうのは、変な執着を生んで終わってしまうだけ。




私は、ただ1人で校門を出た。




ー七番目視点ー

彼女の行動を、理科室の窓から眺めていた。

(え、出るの早ッ!?)

(明日…………いや、確かに昨日からしたら今日は明日か…………。)

(…………いや……それでも早くない??????)

(べ、つにいいけどさぁ……。)

(……いや早いな。気にしてないけどさ。びっくりしたわ。)

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