『私も、お前といたいだけ。』〜イタイ姿になってやろうか?〜

※今回は前回からの続き、ふさふさ神と貴公子の“ふざけた愛”編です。

真面目に読んでた方、ご安心ください──爆発します。




"責任とってくれるって、言いましたよね?"


"じゃあ。あなたが教えてくださいよ"


神を前にして、言い放つとは。

人の子のくせに生意気なやつだ。

お前、神になる素質あるよ。


ああ、それとも、この私を惑わせるとは。

お前はやはり狐か?妖だったのかい?

どちらでも構わないさ、お前であるなら。


どう、責任を取ろうか。

何から、教えてあげようか。

私も、お前といたいだけなんだよ。


イタイ姿にでもなってやろうか? 

私のこと……笑うなよ?


いや、笑え。最高に面白いだろうからな。

ふふ、ふふふ、どうしたことだ、笑みが溢れる。


「何、笑ってるんです?」

肩をすくめて、あいつは呆れている

警戒してるのか、耳が垂れているな。

なんだよ、もしや見抜いたか? 私の企み。


一緒に笑ってくれよ。ずっと誰かとそうしたかったんだ。

「なぁに、血で喉は満たされただろう?次は食事でも、と思ってね?」


「え? あなた、料理できるんですか?」

ぴこん、耳と尻尾を立てて一歩前に近づいてくる。

おい、おい。かわいい犬だな、お前は。

撫でてやろうか?

どう料理してくれようかね?

食材はお前だよ、私の子犬。


「手前味噌ですまないが。

新妻らしく、味噌汁でもだそう」


ドロン

白い煙に身を包み、私は絶世の色男になった。

「さて。旦那様?美味しく召し上がってくれるかな?」


「……何を!?」

はは、耳も尻尾も逆立てて。

本当に面白い男だな、お前。


今度はジリジリと一歩ずつ下りなら睨みつけてくる。

「それは!!女性の姿でお願いします!!」

逃がさないよ。獣を撫でたいのはお前だけだと、思うなよ?

お前が、先に撫でるのがいけないんだ。

私は必ず復讐するたちでね?


「なんだよ、お前そっくりで、麗しかろう?食わず嫌いはよくないと思うが」

後退りしおって。かわいい奴め。

「そうか、食うより食われるほうが好みか?」

ニヤリ。悪い男の顔も得意なんだぞ私は。

「私はどちらでもかまわんぞ?」


「よせ!!!やめんか! この獣が!」

木陰まで走って逃げられた。

へぇ、足早いな。追いかけっこも悪くない。捕まえてみるのも一興か。


「や、やめ……」

首根っこを捕まえる

その瞬間、ドロンと白い煙に奴は包まれ、子犬とも、小狐とも、つかない獣になった。

なんだ、いじめすぎたか?

腕の中でジタバタする子犬を優しく、優しく撫でてやる。

ふわふわで癒されるな、これは。


やめろ、とでも言いたげに

ぱしん、尻尾で手をはたかれた。

刹那、ひらりと逃れ離れるお前。

なんだよ、お前も犬ではなく猫神か?


ドロン

落ちついたのか、獣のやつは元の姿に戻った。

挑むように、より一層睨みつけてきた。

「くっ……後悔させてやりますよ」

追いかけっこはお終い。いや。交代してやると言いたいようだな。

食ってやる、と瞳が語っている。


なんだよ、私としたことが。

惚れてしまうだろ。

自覚したら耳まで赤くなってしまう。


「ちょ……そんな顔するな……ッ!」

お前のせいだろ、色男!


おずおずと近づいてきて、懇願された。

「……今のは、冗談、ですよ?」

肩に手を置かれる。

「頼むから……そのまま、元の姿におかえりください」


…………

仕方ないな、お互い身がもたない。

ドロン、白い煙とともに、私は愛らしい少女になった。


「……何でもいいです。どんな姿でも、あなたがいい」



死ぬほど真剣で静かな本音

そうだね、同意するよ。


「……でも、できれば今日は、女性の姿でお願いします。夢に出ますから……」

「それはそれで、食われたい願望では?」


あのね、あんまり意地悪を言うと怒りますよ?冷えた瞳が語っている。

意外と怖いな。うちの旦那様は。

それでも、すぐに優しい色の瞳になる。

天然で惑わしてくるな、この狐。


「……あの、それでも初めては女性がいいです」

ふむ。まあいいが。

女が食われるばかりとも限らんがな

ドロン

白い煙に以下略

私は色香に塗れたボインボインのお姉さまになった。


「これだから、獣は!!慎みを持たんか!!」

「そういうこと言う奴が一番危ない趣味してると、人の子から聞いた気もするが?」


ぐっ

なんだ、ぐぅの音も出んのか、つまらん


「そっちがその気なら俺にも考えがありますよ」

ドロン

白い煙以下略、あいつは絶世の美少女になった。服はきっちり、胸はささやかだな。良い趣味をお持ちで?


「どうです、あなたそっくりでしょう!」

えへん、ぷい

おい。私はそんなこと、せんぞ。

「俺はね!あなたに惚れてる!好きなんですよ!」

清々しいまでに胸を張るな、お前。

「何度、言えばわかるんですか!」

真っ直ぐ詰め寄ってくる。


「はは、熱烈だね。私は猫舌だからやけどしてしまうよ」

少しは茶化さないと恥ずかしいだろう?

お茶受けでも出してやろう。


「まあ?女同士でニャンニャンするのもよかろう。合わせてやる」


「本当にいい加減にしろ!この猫神が!」


なんだよ、我儘だなぁ。

「いっそ、全部試すか?まだるっこしいな」

ドロン

両性というやつだ


「そっちが、その気なら」

ドロン

無性というやつだ。


あぁ、これは手が出せないか。

怒らせすぎたかな。

ぷんぷんする、お前が可愛くて、つい、な。


呆れられてしまったか?

ため息のような声を漏らした

「……なんでそんなに軽々しく変わるんですか?」

少し、耳と尻尾が震えている。

「……俺には、それがすごく、怖いんですよ」


「そうか、お前はつい先程まで人の子だったな」

悪かった、怖がらせて。

ドロン

元の少女姿に戻る

あわせて、奴も元に戻った。

「すまない。私も、お前といたいだけ、それだけなんだ」

シュンとしてしまうだろ。

袖くらい、握らせてくれ。

祈りを捧げるように見上げた。


一閃。感情の雷が落ちたそうな。

こうして、社は末永く爆発してしまったらしい。

無惨にも大破したそうだ。

酷い、話だったね。

怖い怖〜い。


お終い。いや、終われ






どうするんだ!野良神になってしまっただろ!


五月蝿いですよ。

ここに、社を建てましょう


作るのか、お前と?


社ですよ?

三柱目はまだ先ですが。


ほぅ、私は何も言ってないが?


続くな!

今度こそ終われ!!

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『俺の願いは、君と同じになりたいだけ。』 〜神さま、俺と“永遠”を望もう〜 kesuka_Yumeno @kesuka_Yumeno

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