第2話

驚いて声の主の方を振り返ると、そこには——

背が高くて、どこか洗練された雰囲気の男の人が立っていた。目を引くほど綺麗な顔立ち。


「ちっ、彼氏持ちかよ」

「行こーぜ」


男たちは舌打ち混じりにそう言って、そそくさとその場を離れていった。


ホッとしたのも束の間、男の人は小さくため息をつくと、優しく忠告するように言った。


「……ここら辺、あんまり治安よくないから。ひとりでウロウロしない方がいいよ」


そう言って、彼はその場を立ち去ろうとする。


——行っちゃう。どうしよう、でも……。


「……あのっ!」


思わず、その腕を掴んでいた。


男の人が振り向く。目が合うと、急に心臓がドキンと鳴った。


「こ、ここに行きたいんです!」


スマホの画面を見せながら、見ず知らずの彼に懇願する。

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