例の夢を見たころからだろうか。傘は頻繁に忘れていた。会社に行くときに見るニュースで降水確率が高くても持って行かない事が増えた。机に置かれた傘は愚痴をこぼしていた。

「全くよ。風邪ひくと思いますがな。椅子さんよ。」

不満そうに言っていたので何かあるのだろうと口に乗っかってみた。

「最近変わった事とかありましたか。なんか不満とかあったら聞きますよ。」

そういうと開口一番に出てきたのが心配だったのは通常運転で安心した。

「風邪ひいたとか言われると面目なるんだよな。折り畳み傘なんだからどこでも連れてけっていうんだ。どうせあれだろなんかあったんじゃないか。」

最近は持っているのになぜか濡れて帰ってくることが多くなった。明白な理由が分かったような気がした。

「あれじゃないですかね。この間澄人さんが来た時の話じゃないですかね。」

少しおちゃらけた空気ではなくなっていた。少しだけ真面目そうな雰囲気。

「薄々気が付いてたよ。そうなんじゃないかって。やっぱりそうか。あの時計も何も言わないでどうするんだって話だ。今度そそくさと入ってきたらそこだけ雨水かけてやろうか。まあ話したくない事の一つや二つあるのは分かるけれどもよ。」

話してくれない事に少し思うことがあったのだろう。何かを隠しているようだった。それと謎に思うのはなんで話してくれていないのかが疑問に思った。


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