第5話針を探す
1時間30分かかった。
私達は縫製会社に勤めている。針の管理はとても厳しい。その大切な針を落としてしまいなかなか見つけることが出来なくて1時間30分探しやっと見つかった。
私は普段アームカバーをしている。エアコンの冷たさが嫌なのもあるが、今は傷が見えないようにつけている。でも、針を探す時アームカバーをわざと外した。だって、彼も探していたから…。私の傷に気付けば良いと思って外してみた。
まだ赤く傷が残る私の手首に彼が気付いたか分からないが、何度か彼は私に話かけてきた。
「こっちの箱の中まだ見てないから見てみて。」
「そんなに遠くまで跳ねるかな…?」
「こんなに見つからないことある?」
私にはこんな語りかけも嬉しかった。余り彼の事を見ることは出来なかったが、近くに居るだけで嬉しかった。振られてもまだ好きで近くに居るだけで嬉しくなって同じ職場っていうのは本当によくない。距離が近すぎて忘れる事なんか、ましてや嫌いになる事なんか出来ない。だからきっと私はこのまま彼の事を思って生きていくのかもしれない。嫉妬に狂いハサミを手に彼女に襲いかかるかもしれない…。そんな恐怖と戦いながら生きていくのかもしれないし、もっとズタズタに自分を傷付けるのかもしれない。
どれだけ彼を好きだったかの証明のように、彼に付きまとい彼の行動をチェックする。週末またアパート行ってみよう。針を探す様に彼の全てを探りに
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