とある神社で起きたこと その1(Eさんの話)

「なんだよ、そっちも結局、何があったかわからないじゃないか」


 Bさんがそう不満を漏らせば、


「文句があるなら、今からでも校長になって、金庫の中を確認してみればいい。何かわかるかも知れないぜ」


 Cさんも負けずにそう言い返す。

 その時、ここまで静かに話を聞いていたEさんが口を開いた。


「モノノケねえ……Aさんたちって、何年生まれでしたっけ」

「19○○年です」

「そうすると、さっきの話は君たちが小学校6年の時の話だから……」


 Eさんはそう言いながら指を折りつつ、


「やっぱり……とすると、もしかしたら関係があるかもしれない」


 そして、こんな話をしてくれた。



             § § §



 私が高校1年生のときのことだ。

 近所の○○神社が、立ち入り禁止になったことがあった。


 ちなみにその神社は、Aさんたちの小学校があった○○市の隣の△△市にある。

 直線距離で5、6kmと言ったところだろうか。


 神社は小高い丘の上に建っていて北と南にそれぞれ階段が一本ずつ、参道として設置されている。

 そんなアップダウンがちょうどいい運動量だったから、私は、その神社を毎朝のランニングコースにしていた。


 ある日、いつものランニングの途中、その神社に差し掛かったとき、階段の入り口に金網のフェンスが設置されているのに気が付いた。


(あれ、昨日まではこんなもの無かったぞ?)


 そのフェンスは、柵の上に有刺鉄線を備える厳重なもので、見れば、神社の周囲を取り囲むように設置されている。


 ふと、フェンスに設置されている看板に目が行った。そこには、


「有害鳥獣駆除中のため立入禁止 ○○神社」


 とだけ記載されていた。


(なんだ?熊でも出たか?)


 近くに山があり、そこに熊が出没したという話は時々耳にする。

 しかし、この近所まで熊が来たという話は、生まれてこの方一度も聞いたことがない。

 それに、神社を取り囲んでフェンスが設置されているということは、このフェンスの内側に「有害鳥獣」を閉じ込めているということになる。


(なんだよ、それ……)


 急に気味が悪くなって、私はそこを離れた。



             § § §



 それから1年後くらいのことだ。

 その神社が、建て替えをしたという話を聞いた。


 久しぶりに足を運んでみると、神社は何もかもが新しくなっていて、昔の面影は何もなかった。

 ふもとには、ご丁寧に駐輪場が設置されていた。

 苔むしていた階段はすっかり整備されて登りやすくなり、境内には真新しい玉砂利が敷き詰められていて、まるで周囲まで輝いているように感じられた。


 鳥居もおやしろも、すっかり立派になっていた。




 その日の夜、夕飯を食べているとき、家族にその話をした。

 すると、母親もすでに神社を見に行っていたようで、


「それにしても、あれだけの修繕をしたら、すごくお金がかかったと思うんだけど、どうやって工面したのかねえ。氏子さんだって、わからないくらいなのにさ」


 そんな不敬なことを口にする。


 ただ、確かにそれは不思議なことであった。

 そこで私が、例の「有害鳥獣駆除中」の看板の話をすると、4つ歳上の兄貴が、こんな話をしてくれた――

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