第24話「え、魔神って本当に出るんですか?」

「オーブ、もう必要なくなったって……!」


アーマンタイト牧場に響く、えーさんの魔法通信。

その声を聞いたあーちゃんとおーちゃんは、思わず顔を見合わせて歓声を上げた。


「やったーっ! これで冒険も終わりだね、おーちゃん!」


「ぷるるっ!」


七色の輝きを放つ融合オーブをぎゅっと抱きしめるあーちゃん。


だが、その通信は次の言葉で一変する。


『……ただし、これから真の敵――“魔神”と戦う。』


「え……?」


「ぷる……?」


声が震える。あーちゃんも、おーちゃんも、いーさんもうーちゃんも、皆固まっていた。


「魔神って、まさか……あの封印の向こうにいた……?」


「一人で行ったのか、えーさん……!」


そこまで言いかけたところで、通信はぷつんと切れた。


――天空城、女神の間。


そこには、禍々しい黒紫の魔力を纏う影が佇んでいた。


その名は、“魔神ゼル=ヴォルド”。


レベル999。


対するえーさんは、スライム軍団を駆使しつつも、単独で立ち向かっていた。


「いけるか……!? オレの全力を――喰らえッ!!」


渾身の一撃が魔神を貫く。だが、魔神も黙ってはいない。


「愚か者がァ!!」


放たれる暗黒の波動。えーさんは咄嗟にスライムで盾を作るが、それでも地に膝をついた。


「……っ、くそ……!」


その時――


「ご無礼!」


「遅れてすまぬ!」


「参上仕りましたぞ!」


「ついでに通りかかったので……。」


四つの声が重なって、天空城の空に浮かぶ戦場に姿を現したのは――魔王と四天王たち!


位置義理堅、参謀ルベル、最弱の戦士グライム、そして――最後の一人、呑気な旅芸人“カラット”。


「え、なんで旅芸人が……。」


「まぁ、強いからってスカウトされたんだよね~。」


魔王がうなずく。


「貴殿一人に任せては、義がすたる。我らも魔神を倒す!」


共に放たれる光と闇、火と氷、音と影。


強者たちの攻撃が魔神を包み――


「今だ、えーさん!!」


「うおおおおおお!!」


最後の一撃は、えーさんの拳によるものであった。


ズドォォォォォン!!


魔神は断末魔の叫びをあげ、空中で爆ぜるように消滅した。


――静寂。


残ったのは、瓦礫の上に座り込むえーさんと、その周囲に立つ四天王。


「……倒した、か?」


「うむ、確かに。奴の気配は消えた。」


魔王が微笑む。


そしてその頃、牧場では――


「……えーさん、勝ったよね? 勝ったよね……?」


「ぷるっ……!」


あーちゃんはオーブを抱きしめ、涙をこぼしていた。

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