第7話「え、あなた勇者じゃないんですか!?」

静かな草原。

あーちゃんはいつものように、地面に座ってスライムと戯れていた。

背後には俺、えーさんことええええ。

今日は特にレベリングというより、のんびり探索の日だった。


「えーさん、あのスライムに“うにょ”って名前つけた!」


「どこから出てきたその発想……?」


そんなやり取りをしていた、その時だった。


「……ほう、あの子供が旅をしているのか。しかも、まさか――勇者だと!?王国は正気か!?」


叫び声と共に地面が割れ、爆発音と共に現れたのは、黒いマントを羽織った筋肉質の男。

目元のスカウターのような眼鏡が光っている。

えらくテンションが高い。


「名乗るほどの者ではないが……まあ名乗ろう。俺は魔王軍四天王、最弱にして最強の希望、バルゴ・ザ・グレイだ!」


「名前と肩書きが矛盾してるぞ……。」


「子供が勇者だなんて、そんなバカな話があるか!……いや、あの後ろのイケメン、あれが本物の勇者だな!?そうだろう!?」


「え?俺?」


「貴様が勇者ならば、今ここで討ち取る!覚悟――!!」


ドゴォッ!!


俺の右拳が自然と先に動いた。

もはや反射だった。

拳がバルゴの腹部を直撃し、彼はそのまま地面を滑っていった。


「……がっ……ふ、不覚……。」


草原にくぼみを残しながら倒れたバルゴは、震える指で俺を指差した。


「まさか……こんなにも強いとは……やはり貴様が……っ!」


「いや、違うって。」


「ちっ……今日のところは引くしかあるまい……再選を誓う!!さらばだ!!」


そう叫んで、彼は何故か自力で掘った穴に飛び込んで消えた。どこに繋がってるんだその穴。


「……なにあれ?」


「四天王……?こんな感じなんだ……。」


その頃、魔王城。


「ほう……バルゴがやられたか。」


魔王は部下の報告を受け、ワインを片手にソファで足を組んでいた。


「勇者と名乗る者が……いや、違う、名乗ってすらいなかったな……あれは何者だ……。」


部下が困惑する中、魔王はクスッと笑った。


「まぁ、面白そうだから、放っておけ。」


苦労人と噂される魔王の眼差しは、少しだけ楽しそうだった。

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