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「三咲ちゃーん、そろそろ休憩いっといで。タイミング逃すよー」







八木さんがパントリーの補充をしながらこちらに声をかける。


気づくと外は、街灯がつきはじめていた。







「はーい、いってきます」







エプロンをとって、

休憩室から繋がるバックヤードへ出た。






八木さんは私より1年早くNo.5に入店した先輩。





今年大学2年生になった八木さん。




オートレースと旅行が趣味。最近行った国はインド。そこで財布を擦られて友達に借金中。もちろんオートレースもお休み中。タバコはラッキーストライク。コーヒーの匂いを嗅ぐためにNo.5で働き始めた。しかしブラックは飲めない。大学生になってから全然モテないとよくぼやいている。彼女大募集中。





私は八木さんに詳しい。




八木さんを男として見たことはないが、

八木さんのことはよく知っている。



週7勤務の私たちは

他の誰よりも顔を合わせている。


家族より、友達よりもよく会うし、よく話す。





嫌でも八木さんの知識がどんどん増えていく。



嫌でも、なんて言ったら

八木さんきっと悲しむな。







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