ブルーブリッジ
@amechelly
1
木曜日の午後6時、
駅前のカフェ"No.5(ナンバーファイブ)"は
今日も人で溢れていた。
カウンター越しの女子高生。
レジを打ちながら、彼女が手に持っていた財布のロゴと、小さな傷がいくつもついた自分の手を見比べた。
私には縁がない、ブランドものの財布。
年齢に相応しくないとすら思う、
ブランドものの財布。
これだけ働いても買えない、
ブランドものの財布。
「(別にいいけど)」
女子高生にカフェラテを二つ手渡して、
次のお客さんに手を挙げた。
何度目だろう、何かを諦めるのは。
まあいいや、って思うたびに
ちょっとだけ満たされた。
別にいいけど、って思うと
平気なフリができた。
願っても叶わらないなら、
はじめから望まなければいい。
期待しなければいい。
周りの大人も、教師も、みんな
いて欲しい時にいてくれない。
声をあげても、
助けてくれない。
方法はこれしかなかったのに
願えば願うほど遠のいていった。
理由を見つけて
言い訳を探して
諦めた。
そうすれば楽になれる。
何度だってそうしてきた。
もう、期待しない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます