Stones-石の守護者達

ほしのみらい

プロローグ ある男と老住人、そして翡翠とシトリン登場

 少し過去に時間をさかのぼる……。



※※※


 その地は、道路というには大袈裟なくらい整地されていない通り。

砂利道なのだが、集落の人々はそこを道路と言う。


その道路脇の一軒の小屋。


幾つか並んでいる一番端の小屋に中古のジープがやってきて止まった。

男が地図を片手に降りてくる。そして小屋に入っていった。


 小屋の中のその老人らしき住民は男に細かく道を説明した。


「ここからここへ。途中の道は険しいが、あんたの車なら近くまで進めるさ」

「なるほど、近くまでジープで向かえるんだな?分かった、そうする。爺さん、これは少ないが私からの礼だ」


 小屋を出る男。礼だと言って紙幣の束を放り投げる男。


 老住人が叫んだ。

「帰りは寄っておくれー。食事位は作っておくからよー」


 男は老住人の言葉に、手を挙げて振りながらその場を去った。


町で借りた中古のジープは、黒い排気ガスをまき散らし、砂埃を立てて走り去る。

通りでそれを見送ると、道を教えた老住人が道路脇の小屋に戻って来た。


 その老住人、かねてから他の地域、いや他国から度々この地へ訪れているという謎の人物。多分、ジープの男と同じく書物を探しているのだろうが見付からないというのが現状だった。

そしてそこにジープであの男が噂を頼りに訪ねてきた訳だ。


 老住人は火山の事、火山活動が活発になっている事は話さずにいた。


(まもなくあの洞窟はマグマに飲まれるだろうな。あそこに入るという事は、少なからず書物が目的……だがあの男が書物を発見出来たとしてももう手遅れかもしれない……まぁ、無事戻れたならここへ寄るだろう。食事しながら話を聞くとするか)



※※※


 地響きを立てて火山が噴火した。河口付近ではマグマが噴き出す様子が分かる。

老住人は、それ見たことかと薄笑いを浮かべた。


 (あの男が生きて帰れたら書物の情報を聞かせてもらおう)



※※※


 数時間後、命からがらジープを操り、戻ってくる男。

案の定、元の小屋へ戻って来たのだった。


「火山の噴火に邪魔されたが、目的はほぼ達成した。ありがとう」

「旦那さん。食事、していきますかね?」

「いや、このまま帰るよ。やる事が出来たのでね」

「目当ての物にはお眼にかかれましたか?」

「まぁな、古い書物を見たよ。持ち帰れなかったがメモを取った」


 男は自慢げにそのメモを老住人に見せた。

メモには5つの石の名が書かれていた。老住人はそれだけを覚え込んだのだった。


「噴火が起こるとは予想しなかった。今頃あの洞窟は埋まってしまっただろう。中にあった書物は熱で炭になったのだろうさ……」

「私の案内も少しはお役に立てましたか?」

「少しはな」


 そう言うと男は小屋を出て、ジープを空港に向けた。


 見送る老住人は、付けていたマスクをいだ。



※※※


 そして、時間は今の時節。


 日本の首都東京。とある場所。


「ゴッド。次は東京を離れた方が良いのでは?」

『今の東京は情報収集には適した場所だろう。翡翠ひすい、シトリン、君達はチベットの山奥にでも行きたいのかな?』

「冗談はよしてください」


 ストーンズメンバー翡翠。パワー翡翠の守護者。日本人男性。代々、糸魚川いといがわで古くからパワー翡翠の守護をしてきた。


「ゴッド、冗談はほどほどに。ようやく奴らの目当てを探り当てました。どうやらアルゼンチン、アンデス辺りに向かうと思われます」

『なるほどアンデス山脈か。となるとインカローズが目当てだな。多分パワーインカローズは、インカ帝国の末裔の手にあるのだろう。よろしい、皆で向かってくれ』

「了解ゴッド。奴らより先に必ず見付けます」


 翡翠の他にもう1人の女性。


 ストーンズメンバーシトリン。その名の通り、パワーシトリンの守護者。マダガスカル出身。多言語を使える。故にストーンズメンバーが喉に付ける変声翻訳テープ無しでも会話する事が多い。彼女を引き入れたメンバーのタイガー曰く、かなりの酒豪らしい。


 彼等が奴らと言っているのは、ストーンブローカー、スティーラーズ。

その一味は、価値のあるストーンを採掘したり、又は買い付けては、世界中の富裕層に高値で売り付ける組織。だが、パワーストーン本来の力を知らない。その点はストーンズ達には好都合だった。


 ストーンズ。ストーン本来の力を持ってスティーラーズに立ち向かおうとする石の守護者達だ。現代の守護者達には石の力はあまり分かっていない。


 今の時代では、スティーラーズの凶悪化により武器を所持する場面も出てくる。

まぁ滞在する国に応じてという事になるが。


 ストーンズは、未発見の石の守護者といにしえの書物を探して、ゴッドと言われる者と共に行動している。

……が、ゴッドとは通信のみでの会話。ストーンズのメンバーの数名以外にはゴッドの姿を見たことはない。


 古の書物とは、古くは中世の時代に記されたもの。パワーストーンに関する事が記されており、中でも5大ストーンはその力を持って世界を支えるらしかったのだ。

但しその5大ストーンの詳細はメンバーはおろかゴッドすら知らない。


他にもパワーを秘めたあらゆるストーンが記されていて、その力の説明も明記されているという。


「シトリン。早速アルゼンチンに向かおう。……まもなくタイガーとサファイアが戻ってくる頃だ」


 ここは、東京のとある場所。ストーンズのアジトである。

 地下2階地上3階。移動用の車両は数知れない。そして彼らは武器は持たないケースがほとんど。メンバーが持つストーンの力だけでカタが付いてしまうことが多い。

このストーンのパワーを使って今までスティーラーズを追跡してきた。


 東京のアジトの建物上階は各国用のパスポートや免許証、身分証明書などを制作するアトリエ。声を変成翻訳するテープの作成をしたり、変装して体系を変えるための技術工房など。

 地下には各国紙幣、カード類、貨幣やパスポートといったあらゆる偽造の工場を備えている。また、特殊任務に応じてボディスーツを作る工房もある。

これらの設備は、世界数ヵ国にも同様の設備を有するアジトがあり、ストーンズメンバーの合流地点になっている。


 ゴッドの話では、これらの設備は20年前位に造られた。

 各アジトには、数名のスタッフが常駐しており、隠密にストーンズメンバーをバックアップしている。


また幾つかの国のアジトでは銃の類を製作する場所があるらしい。万が一スティーラーズが共産国家に肩入れした時の対策だそうだ。

 そのスティーラーズはと言うと、昨今は巨額の資金を蓄え、ゴッド曰く、先進国の年度予算並みの規模に膨れ上がっているらしいのだそうだ。


 ストーンズの持つパワーストーンは魔力にも似た力を持っているが、スティーラーズはそれを知らず、ただ古いものだからと言っては富裕層達をだまして巨額の取引を重ねてきたのだった。

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