不可視の浪漫

@jx500

第1話 不可視の大河

仏教の教えによると、人は亡くなった後、現世とあの世を隔てる川を渡りあの世に行く

その川は、どんな川でどんな色なのか、どのくらい大きいのか、誰も知るよしもない

きれいで、カラフルな川なのか

それとも、黒く汚い川なのか

僕は、きっと綺麗で美しい川だと思う

だって、みんなが渡りたがる川なのだから

亡くなったおじいちゃんやおばあちゃんだって、戻って来なかったのだから

まるであの川のように綺麗で美しい川に違いない


あの川は、月が起きていると隠れてしまう

だんだん月が眠りに就くにつれ、現れる

肉眼で観るには、かなりの条件が揃わない限り、観ることはできない

たとえ、条件が揃い肉眼で見えたとしても

その川の本当の美しさに気づくことは、できない

暗闇にそっと現れる川は、果てしなく永い旅をしている旅人である

あて先もなくただただ、永遠に旅をしている

その川をどうしても自分の目で見る体験をしてみたいと思った

この世には、人間の目より優れた目が存在し、それを使えば川を見ることができる

そう、カメラだ

カメラにはシャッタースピードという機能があり、スピードを遅くすれば光を多く取り込むことができ、人間の目では表現されない光を表してくれる


不可視の川を見るのに必要な機材は、

カメラ(30秒シャッターを開けるモノ)

三脚

赤道儀 の3つだ


聞き慣れない、見慣れない機材がある

赤道儀だ

赤道儀とは、簡単に言ってしまえば、地球の自転に合わせてカメラを動かしてくれる機材だ

赤道儀を使わず三脚のみで使用すると、地球の自転により、不可視の川を撮ることが出来なくなってしまう

赤道儀は、ピンキリであり高いもので100万は越えるものがあるが、今回の川を撮る場合は、2万程度の小型のモノで十分である


新月の夜 夜なのに月が眠りに就くこの日に撮影をすることが、第1の条件

晴天で雲が少ないことが第2の条件

周りに強い光を発するものがないことが第3の条件

一番美しい川を撮るなら季節は夏なのが第4の条件


この4つの条件をクリアし

三脚に赤道儀を取り付け、さらにそこにカメラを取り付け南の空を映そう

そこから、30秒シャッターを開け待つと

そこには、とても綺麗で美しい天の川が現れる

地球から何億光年も離れた銀河から発せられた光が永い永い旅をし続け、さまざまな色で彩られた川が現れる

目では見ることの出来ない川に感動し、遠い宇宙の先にある銀河に思いを馳せ、夢や将来のこと今の現状や愛を語ろうではないか


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