第2話
「マジムごめんなさいー!しなないでー!わーん!」
「いたいことしてごめんなさいー!うえーん!」
膝をついて蹲る俺にガキ達…アンジュたちが縋り付き、うるさい泣き声がカミナ孤児院の広い玄関ホールに反響して響く。その不快感に顔を顰めながら、俺は声をひり出して叫んだ。
「痛く、ねえし、死なねえよ…っっ!」
郵便受けに新聞と手紙をとりに行って戻った際に、球遊びしていたアンジュの蹴ったボールが俺の股間にぶつかった。たったそれだけのことなのに、さっきから激痛で脂汗は止まらねえし呼吸もまともにできねえ。元の姿の俺ならこんなの痛くも痒くもないってのに、人間の体ってのはマジで貧弱な上不良品すぎるだろ、クソッタレ。
「どうしました!」
「あ!マー君がたおれてる!」
「どうしたの!?ケガ!?」
アンジュたちの泣き声を聞いて、階段の方から黒肌白髪の魔女…ネリヤ シュリの声と他のガキ達のかけよる足音が聞こえる。
「マジムーだいじょうぶ?」
「マジムさん、どこか痛いんですか?見せてください、治しますので。」
「なんともねえって、大丈夫だから…!」
俺は情けなさで震えそうになりつつもなんとか平静を装って立ち上がる。この程度で痛がってるなんてそんな醜態をコイツの前で晒せるか。
「ぼくがボールをマジムにぶつけて…うっ、うっ、ごめんなさい…」
まだべそべそしているアンジュ達に、泣きてえのはこっちの方だと思いつつも、泣き止ませるためにシュリがしてやっていた様に頭を撫でる。もう爪もない手だ、これくらいは問題ない。
「もういいって…次からは気をつけろよ…他の奴にぶつかったら、それこそ危ねえんだからな。わかったか。」
「うん…」
アンジュから離れると、ニコニコしてこちらを見ているシュリの顔が見えた。俺は思わず舌打ちをして、取ってきた封筒を押し付けた。
「手紙、届いてた…カロンから」
「ああ、あの子から。」
俺の言葉にシュリは嬉しそうに目を細めた。
カロンはここ、カミナ孤児院を12年前に「卒業」した奴で、年に2回、必ず手紙を送ってくる。オレの記憶が正しけりゃ、カンチョーを仕掛ける様なとんでもないクソガキだった。シュリからかけられた呪いでできねえが、三枚におろしてやろうかと思ったほどの奴だ。しかしそんなクソガキも、今じゃ立派な大人らしい。
シュリが白銀の封蝋を外して封を開け、手紙を取り出すと、封筒からさらにドサドサと沢山の何か…ガキ用のおもちゃが飛び出した。
「わーかわいいお人形!」
「カイジューだ!」
ガキ達はそれぞれに欲しいものを手に取ってはキャイキャイとはしゃいでいる。手紙に目を通していたシュリは顔をあげて微笑んだ。
「カロンさんからいい子の皆さんへ、プレゼントだそうです。カロンさんに感謝して、大切に使いましょうね。」
「「はーい!」」
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