現在の日常

入学式が終了し、学園での生活が始まった。

小説だとあまり学園の授業内容とか書いて無かった。今しているのはいわゆる『地球』とかであった言語の勉強、言葉遣いの習得。数学等の計算、この国の歴史の勉強。そして戦闘訓練。そんな日々を過ごし、俺の心は素晴らしい充実感で満ちていた。


棗「・・・・・。」


水精霊「どうしたの?」


棗「何か、また流されてる。」


闇精霊「良いんじゃない?"青春"って感じで。」


棗「分かってる?その"青春"の先は過酷な戦いの日々だよ?」


蓮司「棗ぇ。昼飯。行こうぜ?」


棗「はぁ、考えても仕方ないか。行く行く。あれ?すみれは?」


蓮司「何だ?淋しいのか?今日はあいつ、他の女子と飯食ってるよ。約束したんだって。」


ふ〜ん。まぁ、他にも友達が出来たのは良い事だな。


蓮司「それにしてもお前は凄ぇよな。」


棗「何が?」


蓮司「戦闘訓練の時、皆んなヘロヘロなのにお前だけは平気な顔してさ。」


棗「ま、まぁね。」


そこは爺やと婆さんのお陰だ。


棗「そう言うお前も平気そうだけど。」


蓮司「俺も学園へ入学すると決めた時にかなり鍛えたからな。」


棗「聞いた事無かったけど、お前の実家って貴族じゃないんだろ?色々、大変だったんじゃないか?」


蓮司「まぁな。俺の家は古びた宿屋なんだ。親や近所の人達とかに助けて貰って俺は今、ここにいるって感じだな。お前は?」


棗「俺は親に捨てられて、そこを"桜庭"の婆さんに拾われて。何やかんやあって今はこの学園にいる。」


俺のちょっとした話で何故か蓮司がグスッと鼻を鳴らす。


蓮司「済まねぇ。変な事聞いたな。」


棗「いや、別に泣く程じゃないと思うけど。すみれはどうなんだろ?」


蓮司「何か、実家は商家で金には困ってない感じの話してたな。」


棗「そのザックリした説明だと語弊を生むから他の人には言うなよ。」


蓮司「お、おう。」


流されるのは良くない。しかし、充実している毎日が楽しかった。だから、これからの事を忘れていた。

ただ、幸いにも本編のイベントは発生していない。何となく大丈夫かな?とは思うけど、こっちも戦いたく無い。このまま何事も無く卒業まで頑張りたい。


蓮司「そう言えば近い内に、祭りがあるんだよな?何て言ったっけ?」


棗「英霊祭な。」


過去に亡くなった人や自分達を助けてくれる精霊を敬うって祭りだ。まぁ、意味合いって言うのは信心深い人やお偉いさん以外には対して価値は無い。普通の人に取ってはただの祭りだ。祭りらしく出店もあるだろう。食べ歩きなんてしながら軽く見て回るのも良いかも知れない。

1日の授業が終了し、俺は寮へと帰る。勿論、いつもの2人も一緒だ。その寮に帰る途中で掲示板を見る。掲示板には英霊祭でやる出し物について貼り出されていた。大食い大会とかやるらしい。本当に祭りだな。


蓮司「お、おい!見ろよ!これ!」


蓮司の言うポスターには"闘技大会"、"参加希望者は事務受付まで"と書いてある。


蓮司「出ようぜ!」


棗「嫌だよ。」


すみれ「私も、無理・・かな。」


蓮司「えぇ〜。はぁ、仕方ない。とにかく受付に行ってみるよ。」


蓮司は事務の受付へと向かう。気になるから俺達も一緒に付いて行った。


蓮司「なぁなぁ、俺達も闘技大会に出たい。俺とあいつ。」


蓮司は俺を指差す。断ったろう!何言ってる?


受付「はぁ?駄目駄目。ちゃんとポスターを見たか?あれは御前試合だ。貴族しか参加出来ないんだよ。」


蓮司「えっ!」


棗「イィエス!」


すみれ「何か言った?」


棗「いいや。」


つい、喜びの声を上げてしまった。


蓮司「じゃあ、何であんなの貼り出してるんだよ?」


受付「参加者は限定してるが見物は自由だからな。連中も"貴族は凄い"って見せたいんだよ。」


蓮司「はぁ?何だよそれ。」


棗「さぁ、帰ろうぜ。」


受付「まぁ、もし帝が鶴の一声で一般人も参加可能とか言い出したら話は別だけどな。」


棗「おい、おっさん。余計な事言って変なフラグを立てるなよ。」


受付「何の話だ?」


蓮司「お前、偶に変な事言い出すよな?」


その場は何とか蓮司を連れ帰る。そして更に日々が過ぎ、英霊祭の当日となった。


蓮司「くっそぅ!参加したかった。」


棗「祭りなんて見て回れれば良いだろう。」


蓮司「いやいや、祭りはガッツリ参加しないと駄目だろう?」


すみれ「私も見て回れれば良いかな?」


蓮司「たくっ。2人共、参加しないで面白いか?」


棗「楽しみ方は人それぞれだろ?」


すみれ「うん。」


蓮司「う〜む。」


棗「とにかく今年は諦めて参加は来年にしろよ。」


3人で屋台を回り、食べ歩いた。


蓮司「そう言えば近々、夏季休暇だな。俺は実家に帰るけど、2人はどうするんだ?」


すみれ「私も家に帰るかな。棗君は?」


棗「帰る実家がな・・・。」


"無い"と言おうと思った瞬間だ。婆さんの事を思い出す。


棗「久しぶりに帰るか。」


蓮司「お?お前も帰るのか?」


棗「そうするよ。」


すみれ「じゃあ、夏季休暇が終わるまで皆んなバラバラだね。」


蓮司「いや、住所が分かればお互い会いに行けるだろ?会おうぜ。休みの間。」


棗「そうだな。取り敢えず、期間を決めて。」


すみれ「そうだね。」


蓮司「えぇ?会いたい時に会う。それで良くないか?」


棗「ご近所さんじゃないからそれは無理だ。」


すみれ「うん。」


蓮司「ちぇ。そうか。」


そして祭りが終わり、初めての夏季休暇が来る。

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