その後の日常

精霊無しと評価されてから1年が経過した。俺は離れ屋で爺やに育てられている。他の使用人達はもう、冷たいの何のって。ただ、訓練となると爺やも冷たい。


爺や「ささっ!坊ちゃま!まだまだ行きますぞ!」


何故だろう。俺より遥かに年上の筈の爺やが俺より元気だ。


爺や「鍛え方が違うからです。」


な!心を読まれた!


爺や「先程から顔に出ていますぞ。」


鉄雄「・・・・・。」


ポーカーフェイスを覚えよう。


爺や「ふむ。その辺もまだまだですな。」


爺やは口癖の様に次期当主は強くあるべきと、ずっと訓練が続いている。そして悲しい事に、以前より自分が成長しているという実感もある。


闇精霊「良かったじゃない。」


何か着々と原作に近付いてないか?


火精霊「フッ。我の活躍する日も近いか?」


止めてくれ。とは言え、具体的な回避方法が思い付かない現状では特にする事も無い。


水精霊「やっぱり素直に屋敷をぶっ壊したら?力を示せば追放も無くなるでしょ?」


火精霊「うむ。我も手伝うぞ。」


こいつ等、何でこんな過激派なの?


風精霊「私は違いますよ?」


闇精霊「僕も。」


とにかく俺はこのまま予定通りに家を出て、退魔士とは関係の無い世界で生きる。その為には何か自分だけで生活出来る様、手段を考える。先ずは身の回りの事から始めよう。炊事と洗濯、自炊を覚える事にした。爺やは次期当主の俺には必要無いと言っていたけど、今後を考えると必要だろう。

予定では、もうしばらくすると"追放"物の話で定番の優秀な弟が産まれる。要するに後継ぎが出来て俺はお役御免って事だ。ただ、"鉄雄"推しの爺やは納得しない。当然、親父と後継ぎの事で揉める。爺やとしては当主の長男が精霊無しとは考えられない。何か意味がある筈と親父に訴える。だが、親父は弟に後を継がせるの一点張り。2人の話は平行線で決着は付かずに終わる。

爺やが俺を事を一番に考えてくれるのは正直嬉しい。だけど。


爺や「さぁ、次、行きますぞ!」


鉄雄「いや、少し休もう。」


爺や「いえ、必要ありません。」


相変わらずのスパルタ。このままだと死んじまう。


爺や「大丈夫です。貴方にはまだその先があります!」


鉄雄「何故そんな事が分かる?」


爺や「私が信じているからです!」


爺やは根拠って言葉を知らないのか?信じるって言ってくれるは嬉しいけど、言葉だけじゃ何の証明にもならないんだよ。


爺や「さぁ!地面の上で寝ていても先には進みませんぞ!でりゃ!」


爺やは体勢を立て直さない俺に構わず木刀を振り下ろす。俺は直ぐに跳び退き躱す。


鉄雄「鬼か!」


爺や「ただの人に御座います。」


こうなったら仕方ない。爺やの動きを見ながらチャンスを伺う。爺やが横薙ぎに木刀を振るとほぼ同時に俺は下から木刀を振り上げる。


爺や「ぬ!」


俺は木刀を頭上に流しながら下を潜る形で躱す。更に距離を詰め胴を狙う。しかし、当たる筈だった木刀は空を切る。見ると目の前にいる筈の爺やが視界から消えていた。


鉄雄「あれ?・・・・痛っ!」


爺やはジャンプで回避。それと同時に俺を跳び越え背後を取り、仕舞いに俺の頭を叩く。悲惨だ。


爺や「ふむ。これならば次に行けそうですな。」


鉄雄「いや、気が早いな!俺なんかまだまだだよ!」


爺や「いえ、坊ちゃまは先へと進む準備が既に出来ています。それに時間は待ってくれませんよ。次に進みましょう。」


ヤバいな。とんとん拍子で難易度が上がる。


火精霊「フフフッ。着々と戦う準備が出来ているな。我も鍛えよう!」


うわぁ。やる気になってる。それから時間は流れ予定通り弟が産まれると、これまた予定通りに親父と爺やが揉めた。

弟の件から俺の追放案が現実味を帯びて来る。ただ、実行されるのはもう少し後だ。そして、追放のきっかけであるイベントがもうじき発生する。

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