分析

web小説の話、と言うよりこの『世界』の事を考えよう。この『世界』は人と動物が普通に存在している。基本的には『地球』と同じだ。しかし、小説にあって『地球』と違う部分がある。それは鬼がいるのだ。鬼と言ってもあの人間に近い姿で角や牙がある鬼では無い。どちらかと言うと魑魅魍魎と言う方が正しいだろう。化け物達を総称して鬼と呼んでいるという事だ。

そんな存在がいる『世界』でどうやって生きるのか?ここで重要なのが退魔士という職業だ。この世界には退魔士と呼ばれる職業がある。それも政府機関の管轄、つまりは国家公務員と言う事だ。軍人や警察、それと並ぶ職業である。因みに時代背景は大正辺りに近いと思う。その証拠にテレビ等はまだ無い。

さて先程、退魔士なる職業の話をしたがそんな仕事をどう請け負うのか?と普通の人は思うだろう。この世界の人は皆が全員[霊力]を持つ。勿論、私も持っている。その[霊力]ともう1つ、退魔士に必要な物がある。それは・・・。


水精霊「へぇ、この子が神様に選ばれたって子?と言ってもあたしは神様なんて会った事無いからよく分からないけど。」


風精霊「私もお会いした事はありませんが、彼が選ばれた子供なのは確かな筈ですよ。ほら、私達を見てます。」


闇精霊「まぁ、確かに僕達を見てるけど。・・・でも、何かゴチャゴチャ考え込んで面倒臭い子だね?」


火精霊「ならば貴様は消えろ。何故ここにいる?」


そう、精霊と呼ばれる者達だ。この『世界』の人間は1人1体、精霊を宿す。宿した精霊は一生変わる事が無い為、その精霊の強さこそが退魔士の能力に繋がる。

精霊にはランクと属性がある。先ずランクについてだが、1番上の上位精霊、次に強い中位精霊と宿している人口が比較的多い下位精霊。稀と言う程少なく無いがそれ程多いという訳でも無い、その他に分類される微精霊の4段階に分けられている。

そして属性だが、種類は6つ。光と闇、火と水、そして土と風だ。よく聞く話だが、勿論精霊によってそれぞれ向き不向きがある。この違いにより退魔士の能力と強さが決まる。

人間による分析の結果、上位と中位、そして下位の精霊はちゃんとした自我を持つ知的生命体に近い存在だとされている。

そして最後の1種類。微精霊と呼ばれている者達は、属性のみの意思を持たない存在である。人が望めば力を貸すが宿主に対し、何か自主的にサポートをする様な事は無いと言う。

ただ、人間が幾ら調べていても1番肝心な所を誰も確認出来ていない。それは、精霊の姿を退魔士ですらハッキリと認識していない所だ。会話は疎か、姿さえ分からない。

正確な意思疎通も出来無い者同士が何故、協力関係にあるのか。設定では神との何かしらの契約と書いてあったが、それ以上はまだ明かされてない。因みに今、私の周りにいるのは上級の上位精霊達だ。


火精霊「しかし、不思議だ。こやつ、何故我々を視界に捉えているのだ?」


風精霊「それが神に選ばれたという証明ですよ。普通に会話も出来る筈です。耳を澄まして下さい。考えている事が聞こえて来る筈ですよ?」


何と!聞こえるとな?思っている事が筒抜けなのは考え物だ。

そう言えば精霊達の会話を聞いていて思い出した事がある。"鉄雄"には2つの能力がある。その1つが精霊達を知覚出来る能力。作中だと[精霊接触]、コンタクトと書かれていた能力だ。その名の通り精霊とコンタクトが取れる能力である。そしてもう1つ。個人的に最も重要だと思っている"鉄雄"の能力。複数の精霊を同時に宿し、その場その場で自由に換えられるという何処かで聞いた事のある様な能力[精霊交換]、チェンジである。

即ち、今この場にいる4柱の精霊は私の身に宿った精霊だ。状況に応じて火や風、水と違う属性が使えるという事だ。


闇精霊「へぇ、そうなんだ。」


鉄雄「・・・・・。」


闇精霊「何?」


物語上、存在はしていると書いてはあった。しかし、闇の精霊について作中で登場はして無かった筈だ。何故いるのか。


闇精霊「光がある以上、闇は何処にでもある物だよ。」


そういう哲学的な話はしていないのだが?


火精霊「おい、それより先程から何を言っている?物語がどうとか?何の話だ?」


水精霊「確かに。気になるよね?」


はぁ、何と言うべきか。とにかく説明するとしよう。


風精霊「今いる私達の世界が人に創作された虚像だと仰るんですか?」


水精霊「嘘っ!」


火精霊「信じられんな。」


闇精霊「面白い話だね。ただ、1番の問題は例の人間が勝手にやってる精霊降ろしの儀だっけ?あれだよね。儀式の後、冷遇されて最終的にはこの家を追い出されるんでしょ?」


火精霊「その心配には及ばない。炎導家は代々火精霊が宿る家系だ。我が派手に炎を出し、こやつの父に火傷を負わせてやる。そうすればこの家にいられる筈だ。」


闇精霊「うわっ!出たよ。火精霊の得意技、大雑把。まぁ、何故か人間の親はあの儀式で怪我をしても大喜びするからね。不思議だよ。」


正に問題はその精霊降ろしの儀だった。元々は精霊を見る事の出来ない人間が精霊とコミュニケーションを取る為の技だった。今はこの儀式で精霊が宿ると信じられている。

そもそもこの『世界』では、人が産まれるとその赤子と相性の良い精霊が自然と宿る。

しかし、精霊についてハッキリと理解していない人間は完全に勘違いをしていた。もう少し研究が進めば、儀式そのものに意味は無いと知られるだろう。だが、まだその段階では無い。

とにかくその儀式で、精霊が振るった力によりランクと属性を判断出来るとなっている。

そう言えば、先程言っていた様に儀式は人間が勝手にやっている事だ。精霊は何も関係していない。ここで力を発揮する必要は無い筈だ。何故、振るう必要があるのか?


火精霊「無論。人間が驚くからだ。」


闇精霊「要するに悪戯だね。」


何と悲しい事か。悪戯とは。


水精霊「人間の考えた分類の通り、あたし達くらいの精霊とそれより下の精霊は明らかに力が違う。だから見分け方としては間違って無いよ。」


風精霊「話を戻しますけど、鉄雄さんが追放させる理由は何なんですか?」


そこが重要だった。ここで微精霊と言われている分類に話が及ぶ。全く力が使えない訳では無いが、技や術が発動させるのが難しい。下位精霊以上の精霊は意思がある為、使おうと思えばサポートをしてくれる。だが、微精霊に分類される者達は人間が具体的にイメージを伝えないと力を発揮する事が出来無い。要するに世間一般では精霊無しの落ちこぼれと言われる。そして追放系にありがちな、落ちこぼれとして"鉄雄"が認定されるのだ。

名家の長男が能無しでは確かに体裁が悪い。ただ、努力をすれば多少は使える訳だから文句を言うなとは思う。

ただ、人の世はそう簡単では無い。気の合う者同士ならば問題は起きないが、合わない者が相手となると悪い方に働く。生存本能に由来しているらしいが面倒な物だ。少しでも似ている者、自分に近しい者は擁護するが少しでも違えば排斥する。身内を確固たる意思で護る為にあるとしても少し違えれば裏切りとして牙を剥く。悲しい事だ。


闇精霊「人間のそういう所が一番面白いのよ。」


火精霊「ふざけている場合か!それで?具体的には何があった?」


小説だと儀式の日、[何も起きず"霊力はあれど精霊無し"と評価された。]としか書かれていなかった。故に正確な話を私は知らない。


風精霊「理由が分からなければ対処のしようが無いですね。」


火精霊「ふむ。しかし、確かに鉄雄の霊力とは繋がっているぞ。」


水精霊「じゃあ、どういう事?」


闇精霊「何かあったんじゃない?僕達に。」


火精霊「・・・・警戒の必要がある。という事だな?」


闇精霊「・・・・・うん。」


火と闇は見つめ合い頷く。いつの間にか仲良くなっている。

確か儀式は5歳の時だった筈。その日が無事に過ぎる事を私は切に願う。

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