第2話 フローラさんのお花やさん



「こんにちわ」


 リンリンと入口のベルがなります。


 ランドセルをせおった、ちいさな女の子が、入ってきました。


 女の子のまわりは、きせつの花でいっぱいです。

 チャイムの1いっかいは、かわいい花屋はなやさんなのです。


「はぁい。いらっしゃいませ」


 カーネーションの、大きな花たば。

 そのむこうから、とてもきれいな女の人があらわれました。


 まっしろのチューリップにもけないくらい。

 すべすべの白いはだをしています。


 かみの毛も金色きんいろをしていて。

 どうやら外国がいこくの人のようです。


「あのー。あなたが、フローラさんですか?」


「ええ。おじょうちゃんは?」


 ピンクのくちびるから出てきたこえ


 それは、わけのわからない、外国のことばではありませんでした。


 とてもじょうずな、日本にほんのことばです。


 女の子は、すこし安心あんしんして、はなしをつづけました。


「わたし、星野ほしのすみれです。じつは、そうだんがあって……」


 フローラは、すみれのかおを、じっと見つめました。


 すみれは、まっすぐなくろいかみのをしています。

 それをまん中からわけて、きちんとつあみにしています。


 でも……。


 なぜか、とっても、かなしそうな目をしていました。


「あなたはわたしに、夢占ゆめうらないをしてほしいのね。でも、だれからここのことをいたの?」


 フローラのこえはやさしさがいっぱいです。


 なのに、すみれはモジモジとするだけ。

 なかなか、しゃべろうとはしません。


 どうやらすみれは、はじめてあう人とはなすのは、とてもにがてのようです。


「あのう……。公園こうえんでブランコにのりながら、ちょっと考えごとをしてたんです。そうしたら、へんなおじいさんがやってきて、なやみごとがあるなら、3丁目ちょうめのチャイムに行きなさいって、そう言われたんです」


「おじいさん? どんな人だったの?」


まるくてほそながい、ゴミばこみたいな黒いぼうしをかぶってました。けっこんしきに男の人がるみたいな、おしりのところが、ツバメのしっぽみたいになっている、黒いりっぱなふくている……」


 すみれがそこまで言ったとき。

 2かいにあがる階段かいだんから、声がしました。


「それは、こんなふくかな?」


 階段から、すみれの言ったかっこうをした人が、あらわれました。


 でも、すみれの話に出てきたおじいさんとは、ちょっとちがいます。

 それを着ているのは、ちいさな男の子だったのです。


「あら! また、トッピのいたずらだったの?」


 フローラは、まゆをしかめると、おこった声を出しました。


「ちがうよフローラ。すみれがとってもこまってて、かわいそうに見えたから、たすけてあげようと思ってさ。だから、ランペじいの力をりたんだ」


「そうじゃよ。わしが、てつだった」


 トッピのむねについている、人の顔をしたブローチ。


 それが、とつぜんしゃべり出しました。


 すみれの目は、まん丸になってしまいました。


 なぜなら、それまでかざりでしかなかったブローチが、まるで、生きている人の顔そっくりになっていたからです。


 しかも、その顔ときたら、公園こうえんであったおじいさんにそっくり!


「お、おじいさん!」


 すみれは、こわくなって、したくなりました。


「あ、こりゃすまんことをした。わしは、けっしてあやしいものではない」


 そういわれても、じゅうぶんに、あやしい気がします。


 すみれは、じりじりと、うしろにさがりはじめました。


「すみれさん。このブローチは、ランペじいといって、生きているおじいさんブローチなのよ。夢占ゆめうらないの力をつかえば、こんなことかんたんなの」


 フローラが、ほほえみながら言いました。


 なぜか、フローラがいうと、ちっともこわくありません。

 すみれは「ほっ」とためいきをついて、またもとの場所ばしょにもどりました。


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