第3話 暴力沙汰
「この糞(くそ)馬鹿野郎が、虚仮(こけ)にしやがって」
ギリギリ歯ぎしりしながら悔しがる。二人が同席すること自体に無理があった。
小心男の我慢も限界がきていた。とうとうついに
「なんで、こんなやつがのうのうと、生きとるんぞ」
と怒鳴りながら
「この野郎ふざけやがって、ド頭(たま)かち割っちゃる」
酒瓶をつかむと、純一の後ろから後頭部を一撃した。
あわてたのはその場にいた面々だった。まさか殴るとは思いもしていない。
止める間もなかった。尾崎が途方に暮れたように
「こりゃ、とんでもないことになったがや」
と呟いた。
取りあえず、善後策を講じなければならない。
「まずいねや。どうしようか」
宮司を含めた五人で、相談を重ねる。
「警察になんか届けたら、松つぁんが捕まってしまうがや」
「儂らもただごとじゃあ済まされんぞい」
「どうしたもんじゃろぞ」
「どうするぞいねや」
「困ったことになってからに」
「ここはの、ひとつ儂に任してくれんかや。儂ゃ、親戚じゃけん、なんとか誤魔化して、警察沙汰にせんようにしちゃろわや」
と尾崎が言う。みんなも他に妙案はなかった。
松は自分がしでかしたことに自分でも驚いて、酔いがいっぺんに引いてしまった。
血の気がスーっと下がっていく。生きた心地がしない。
しょせんこの肌の合わない宿敵の二人を同席させたことが、間違いの始まりだった。神官もとほうに暮れた。知っているのは、神官を含めた五人だけである。
後はこの酔っ払いの被害者小諸純一をどうするかであった。
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