第2話 失礼な奴

 「なんで、ここに…?」

 意図せずそう声がもれてしまった。

 「私もたまにここに来るの。教室だと、どうしても……ね?」

  そういえば、白河は教室だと男女構わずよく話しかけられていたことを思い出した。


 「それで、名前は?」

 「佐原遼。一応クラスメートなんだけど」

思ったよりも失礼な奴、それが第一印象だった。


 「ごめんね。私に自己紹介してない人なんてこのクラスにもういないと思ってたから。」

 そうえいば、颯太も彼女ができるまでは話しかけてたっけ。

 「ねえ。それ何読んでるの?」


 白河が指差したのは、遼の手元にあった一冊の文庫本だった。表紙はすでに角が擦り切れて、長く読み込まれた様子がうかがえる。


 「……『時計塔の影で死す』っていうミステリーの本だよ」


 「へえ。意外。もっとライトノベルとか読むタイプかと思った」


 「……それ、どういう意味?」


 白河はくすっと笑った。からかっているようでいて、どこか真剣な視線が遼の顔を捉えていた。


 「褒めてるのよ。難しい本読む人って、ちょっとだけかっこいいなって思うから」


 そう言われて、遼は少しだけ目を逸らした。照れたわけじゃない。ただ、どう返せばいいかわからなかった。


 もうそろそろ帰ってもらおう。


そう思った時だった。

 「ねえ、今週の土曜日空いてる?」

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