第23話 インターバルその1

「そういえば気になったんやけど、アルゴって名前にした理由はあるん?」

「アルゴ座って、4つの星座が合体した星座なんですよ。それでこのギャングのメンバーが4人になりそうだったんで、ちょうどいいかなーって思って」

「ふうん……面白い理由やね」

「それ、笑っちゃうほどくだらないって遠回しに言ってます?」

「あはは、面白いこと言うんやね」

「すいませんでした……」


 疑い過ぎてしまったみたいだ。もっと素直に聞いた方がいいかもしれない。


「あと一つだけ聞きたいんやけど……このギャングの最終目標は?」

「もちろん大型強盗の攻略です。そのためにも今日は中型強盗で経験を積もうっていうことになってます」


 ウラ、アイラと既に決めていたことをアセラさんに伝える。


「ん、大体分かった。おおきにね」

「いえいえ。……俺からも質問させてもらいますね」


 色々と気になることがあるのだ。


 まずは所持金の確認。一文無しの俺たちに対して、アセラさんはどれくらいお金を持っているのか。


「アセラさんって今何円持ってます?」

「大体100万円くらいかなあ」

「……人を騙してた割には少なくないですか?」

「カジノで負けたんよね」

「……そうですか」


 やっぱカジノって人を狂わせるんだ。……まあ、全て失ったウラよりはマシか。


「このギャングの予算がもうアセラさんの100万しかないんですよ」

「は? いや、え、なんで?」

「あんたがあたしを騙したからでしょうが!」

「あー……ごめんやけど忘れてた」


 すごい最低な発言が聞こえた気がするしアイラが怒ってる気もするけど、いったんそれは置いておこう。


「で、それだとアセラさんの分のアサルトライフルが買えないんですけど……」


 ノース銀行の襲撃前に準備したときは、銃と弾丸合わせて一人500万円ほどかかった。100万では全く足りない。


「構わへんよ。闇医者として強盗に参加する時は銃を使えへんから」

「あ、そうなんですね」


 闇医者というのはデメリットもあるみたいだ。まあ、戦いながら味方の回復ができるとなればギャングは全員闇医者になればいいという話にもなるし、当然と言えば当然か。


「でも貧しいのは変わんないね……」

「そうね。次の中型強盗をミスったら無限コンビニ強盗よ」


 もう飽きてるからなあ。できることならやりたくはない。次は絶対に成功させないと。


「次といえば、アイラ、この後はどうする?」


 ノース銀行の襲撃が終わった。これから何をするかを決めないといけない。このゲームの経験者であるアイラなら何か言えることがあるはずだ。


「また同じ中型強盗をしてもいいし、別のやつをやってもいいし……いったん休憩として自由時間にしてもいいかもしれないわね。

「ふむ……」


 先ほどのカーチェイスを思い出す。……今の俺が実力不足であることは否めない。また逃げ切れない可能性の方が高い気がする。


「アイラ、良ければカーチェイスの練習に付き合ってもらえないか?」

「あたしは別にいいけど……それってしばらく自由時間を取るってことでしょ? アセラさんとウラちゃんの意見も聞いておかないと」

「……」

「ちょっと、ナイさん?」

「ん、ああ。そうだね」


 やけにすんなり快諾してくれたから少し困惑してしまった。てっきり何か要求されるものとばかり。


 ……にしても、アイラの言っていたことは正しい。皆の都合を無視するわけにはいかない。


「私は全然ええよ。死んでるやつを治療して、良い感じに金稼ぎしとくね」


 アセラさんがそう答えたところで、ちょうどウラが昼食を終えたみたいだ。


「話は聞いてたぞ! ボクも大丈夫だ! まだ会ってない友達と喋りたかったところだったし!」

「よし……じゃあとりあえずは自由時間で、1時間後くらいにまた集まって強盗をやろう」

「それでええよ」

「オッケーだ!」


 俺に返事をすると、ウラとアセラさんのキャラはアジトの外へ出て行った。


「ということで、練習しますか……って言いたいところだけど、練習方法とか何も分からないんだよね」

「あたしが追いかけて、ナイさんが逃げる……でいいんじゃない? というかそれ以外ないわよ」

「それもそうか」


 ということで、俺たちのキャラもアジトの外に出て、通りがかった一般車を強奪。その車を使ってアジト周辺でカーチェイスの練習を始めた。

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