爛れ愛

周防

第1話 あの時の…

コンビニの裏に回って、ヤンキー座りで変わらず開けるのに地味に苦労する缶コーヒーを開けて、手の震えと涙を抑えながら一口飲む。

やっぱり苦い。この前に拾ったたばこを吹かそうかとも考えたがバレて退学になったら、と考えると怖くて吸えなかった。

俺は今年から高校生になった。だが何ひとつ良いことはなく、ただ昔の恋愛に1人感傷しているだけで、麻雀とカフェインに頼って生きている。

生きがいなんてそれしかない。あるだけマシだ。

イヤホンで流している曲もラスサビで、思えば最近、失恋ソングしか聴いていないな、と思った。

というのも、俺は今から3年前の中1の恋愛を思い出していた。少し思い出してみるとするか。あれはクラスメイトとの顔合わせの時だった、俺のとなりにいた女に一目惚れした。

それからしばらくして、告白された。だが俺はこれを断った、あぁ、そう、この選択が全てを狂わせた。当時の俺といえば、スマホも持ってはいなかったし、相手は今までに彼氏を何人も作ってきたベテランだ。俺なんかで幸せにできないと、そう思ったからだ。でも、そんな中1の俺はしばらくしてスマホを手にしたときに女に好きな人がいる事を知りながらもう一度その女に告白した。もちろん断られた。

忘れられない。

それからというもの、勉強と委員会の仕事を忙しくして無理にでも忘れようとした。だが夏休み、とうとうぶっ潰れた。軽うつのような状態になっちまった。だけど俺は立ち直ってもう一度この生活に戻った、女は面白い人が好きだと言っていたから、積極的に全校の前に立ってふざけてやったさ。もちろんその女にもウケてたよ。

だけどな、そいつァ突然だったよ。

その女の男の友達が俺にあの時の話をされた。そいつが言うには、中1のときのお前への告白は、好きとかじゃなく、彼氏が欲しいって名目だったらしいぞ、と。あぁ、そうか…と俺は返して素早く踵を返して、独り黄昏れる場所に行った。

俺はなんのためにここまでのことをしたんだろうと。

地位や信頼は誰からも勝ちとってやったさ、相応しい男になるために。と、だが代償として自分の「素」を見失っちまった。その時の俺の胸には何時ぞやに言われた、「不器用だね_____」という言葉が胸に響き渡っていた____。

それから中3になって、新しく好きな人はできた。だが何か違う。違うんだ。安心出来ない。ドキドキが収まらなかった。あの女と話しているときは俺は素でいられたし、安心してリラックスできていた、だがそれができない。俺が本当に好きなのは…

この事に気づいたのは最近になってからだが…

ともかく、中3は勉強でいっぱいいっぱいでそんな事は忘れていた。あぁ、そうだその女が好きだっていう男の手伝いもしてやった。その後は知らねぇが。

そして志望校に落ちて、私立に行くハメになった時、ふとその女のことを思い出した、って訳だ。

ふと財布の中から、昔、委員会で1年間同じだった時、任期終了の時にその女に貰った委員会、1年間ありがとうと、イラストが添えられたカードを取り出し、傍観し、また昔に戻る。毎日がよく分からないようなそんな中、そんなヘタレで馬鹿で、不器用な俺を熱くしてくれたのは麻雀だった。元々は親父がやっていて、教えてもらった。麻雀を打っている間は今までの嫌な事全てを忘れられる。

俺は勝っていった、親父、友達と多くの人に。

でもその先になんか何もなかった。

娯楽にしか過ぎなかったのさ。でも気は一番に紛れた。

依存できるものが欲しかった、そこでカフェインだ。なぜだか分からんが、こいつを飲むと難しい事が何も考えられなくなってフワフワして良い。

だからそこまで美味しくはないが、これも気を紛らわすために飲んでる。

いい加減にしゃがみ込んでるのも疲れてきた。時計を見りゃ、そろそろ学校に向かわなきゃならねぇ時間だ。

自転車に跨がって、細々とした体を丸めながら、けだるそうに向かっていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る