後輩と先輩 その3

「お姉様!探したんですよ!って酒臭!?なんでこんなになるまで飲んで、どこのどい…つ…」 


「よっ、久しぶりミヤノ」


「げっ!?師匠!?」


「師匠!?」


「師匠はやめえや。ていうか「げっ!?」ってなんだよ」


 ずかずかと踏み込んで来たこの女の子には見覚えがあった。ミヤノ、貴戸君より前に担当した我が一番弟子…一人目の生徒である。

と言ってもその姿は俺の知っているものではなく、白いメッシュにゴスロリと言ういかにも配信者みたいな……

「相変わらずちっこいな」


「なにおーう!?」


「ステイだよミヤノちゃん」


 須田さんに後ろからガッチリと抱き寄せられる。


「ん!!はい!お姉さmゲロ臭!?」


「あっごめん」


咄嗟に声に出して謝る貴戸君。その方に顔を向ける。


「誰ですかあなた!!」


「俺の二番弟子」


「は?私以外の弟子取ったんですか師匠??」


「言葉の綾だ、お前の後に請け負った生徒」


その言葉にギロリとした目を貴戸に向ける。


「じゃあ後輩ですね、敬え」


「僕、ダンジョン歴4年目だけど」


「え?先輩?」

 その言葉にまたぽかんとする。ややこしい話だが貴戸君は探索者になって4年目。それに対してミヤノはダンジョンに潜り始めてすぐに掃除屋の研修を受けたため、探索者歴、掃除屋歴ともに3年。

なのでミヤノと貴戸君は掃除屋としては先輩だけど探索者としては後輩と言う関係性になる。


「そういえばミヤノ、今は須田さんに世話になってるんだっけ?」


「はい!今は一緒に住んでます!!」


は?


意味がわからなくて須田に視線を刺す。何でもないように須田が口を開いた。


「いや〜ね?山神君の教育期間終わった後、ミヤノちゃんソロで潜るって聞かなくてさ。危なっかしくて目の届く所に居てあげようと思って…」


「………ミヤノ、変な事されてないよな?」


「私そんなことしてないよねミヤノちゃん!!」


「はい!!家事は分担してくれますしダンジョンにも一緒に来てくれるしお風r」


「わーわー!!」


すごい速さで口を塞ぐ。


「………須田さん」


「………はい」


「ミヤノはまだ未成年ですからちゃんとしてくださいね?」


「善処します」

本当かこいつ。ミヤノ…ほんとにこの人に付いて行って良いのか…あっゲロ臭で気絶してる…


***

次の日

「ん?珍しいな、棚古君から連絡取ってくるの…ってマジか」

 チャットに添付された画像が目に入り口角が上がる。

覇獣の黒竜ベヒーモスを単独撃破かぁ…2年目で高難度下層の中ボス撃破か、こりゃあ末恐ろしい」

 いや、待て。こいつ何で勝手に高難度下層行ってんだ?秘境で幻獣狩りの課題出してたよな?

「……どいつもこいつも手のかかる後輩ばかりしかいないのか…もしかして管理局に問題児押し付けられて無いよな?」

「でもまぁ、後輩が伸びて来てるの実感するとゆっくりもしてられないかなぁ。明日は休みだしバカ弟子の顔でも拝みに行くか」

 この時の俺は大事な事を忘れていた。その日は貴戸君のテコ入れ配信の一回目であり、見守る約束をしていた事を。


***


「……あれ落としたのお前かぁ!!この野郎!!俺の優雅な日常を返せ!!」


「はぁぁぁ?!?!」


***

おまけ

ダンジョン教育の記録1年目(ミヤノ)

「山神!!何か変な草あった!!」

「待ってミヤノさん!それマンドレイクの幼体ってうぎゃぁぁぁ」


「山神さん!!あの蟹美味そうじゃないですか?」

「待てミヤノ!!それキャノンクラブのやべー方…って」

「ギィイヤアァァァ」

「考えなしに突っ込むなぁ!!」


「師匠!あれってヤバイ奴じゃないですか?」

「うん?…黒死鼠ペストラット!?」

「何ですかそれ?」

「地上に出たらえげつない数の死亡者出す鼠」

「ガチのヤバイ奴じゃないですか!?」

「今までのもガチのヤバイ奴だが?!」


教育期間終わり間近

「師匠、今日は何をやるんですか?」

「卒業テスト」

「…え?何で!?」

「教育期間そろそろ終わるから現実をその目で確かめておいで」

「……はい」


「あのー、師匠?ダンジョン下層から帰ってきた時、2つ3つ上の探索者に驚かれたんですが…」

「……そりゃあダンジョンに中学生居たら驚くだろ」

「それもそうですね!」


ダンジョン教育記録2年目(貴戸)

「我の教導者と言うのはそなたか?我はいづれダンジョンの王となる存在、丁重にもてなしたまえ!」

「よしじゃあ深層行くぞ」

「………はい?」


「貴戸君」

「はいっ!!」

「君には自力であそこまで行けるようになってもらうからちゃんと学ぶように」

「1年後まで生きてられるかな…(はい!がんばります!)」

「本音でてるぞー」


教育期間終わり間近

「貴戸君、アイテム運エグくない?いやなに、ガーデン本舗のギルマス紹介したの俺だけどさ…」

「何かいつの間にか幸運系のスキル生えてましたね」

「の割にはダンジョン潜ると碌なこと無いよね」

「それは言わないでください…」


ダンジョン教育記録3年目(棚古)

「あれ…?待ち合わせそろそろだよな…ってメール?」

『名前も聞いたことない人から学ぶ事も無いんで下層潜ります。来れるもんなら来てみろ』

「舐め腐っとんじゃねえぞ…クソガキ」



「棚古君、ちゃんと課題やってるよな?」

『山神さん、ここ本当に下層ですか??あいつらの強さがバグってるんですけど』

「幻獣出没区域の秘境ダンジョンだからそらそうよ」


現在

「勝手に抜け出してベヒ太郎狩りやがったなあいつ…!!」


次回、掃除屋達の受難


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