委員会

冴島ナツヤ

第1話 2018年

2017年と言えば、日本の歴史の中でも類を見ない、陛下の生前退位による元号変更が発表された年である。

他には政界での大逆転だとか、大企業の不祥事だとか、大災害だとかーーとかく、列挙に暇のない年でもある。しかしそれは、どの年も同じだ。やはり元号の変更が、一番人々の心に残っているかもしれない。

そこまで考えて、ふと思い直す。特別2017年に思い入れはないし、それどころか記憶すらも曖昧だ。むしろ、今年に入ってから目まぐるしく環境が変化したから、記憶に残るとしたら2018年の一年だろう。

青年は頭を垂れたまま、最後の検分ーー本当に目の前で倒れている人間が死んでいるかを確認したあと、ゆったりと腰を上げた。

此処で生きているのは、彼ともうひとり。恐怖が天元突破してしまったがために、腰が抜けて顔が弛緩したまま呆けている矮小な男だけだ。


「さて、今度こそ教えてくれますか?」


青年は白い髪の隙間から覗く満月色の瞳を、男へと向けた。

無数の死体。まろびでた臓物。一面に飛び散った赤い液体。ひしゃげた腕と、屈折した足が、ばらばらと転がっているーー地獄絵図のような光景。

冥土の庭に咲いた、噎せかえるような臓物の芳香香る肉の花、揺れる骨の茎、地面へ薄く延びる血の根……おぞましい悪夢の花畑の中で、青年は淡々と言い放つ。


「貴方はどこでーー委員会の情報を知ったのです?」


■■■


東野は、老朽化の波に勝てずに朽ちていく一方の部室棟を改めて見上げると、意を決して足を踏み入れた。

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委員会 冴島ナツヤ @saezimanatuya0728

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