第51話 初めてが屋上……すごっ!
「……掴んだわね?」
「な、何が……」
「アンタ、今私のスカート掴んだわよね?」
「そ、そうだけど……し、仕方ないだろ?そうでもしないと美玖さんがスカートを今にでも捲りそうだったんだから!」
美玖はニヤリと怪しく顔を歪ませて計画通りと言いたげな表情を浮かべる。そして嬉しそうに辰馬へ笑顔を向けながら話しかける。
――ゾクッ
辰馬の背筋が強張り緊張感に包まれる。これほどの緊張は初めてのボクシングの試合以来であった。美玖がどんな返答するのか予想出来ないが、ソレが自身にとって良からぬことなのは確定だと悟る。
「これでアンタの指紋が付いちゃったわね~。それに……これ何か分かるかしら?」
「……カメラ」
「そうよ、大正解」
「まさか隠しカメラを仕掛けているなんて……」
「酷いと思ったかしら?これでも男と二人っきりになろうとしているんだから、ある程度対策はするわよ。まぁアンタの場合は少し違うけどね♪」
美玖が胸ポケットに入っているボールペンを取りながら、辰馬に見せてくる。よくよく見てみるとペン先にはカメラのようなものが付いていた。近くから見ないと分からないほどの小ささであった。そして、あの美玖が辰馬を陥れるような罠を仕掛けてくるとは夢にも思わなかった。
「……その証拠で俺をどうしたいんだ?」
「随分と話が早いじゃない。切替が速いことは美徳だけれど、もっと苦悩を浮かべた表情を見たかったわね……」
(こ、この女……ドSなのかッ!それに美玖さんほどの人気者だ。俺が何を言っても無意味だ。ここは従うしか道はないな)
「そうか……」
「まぁいいわ。そういう事はアンタと付き合ってから徹底的にシてあげるわよ。それでアンタにして欲しいことだけど……えっとね……そのぉ……」
「……なんだ?随分と歯切れが悪いな」
「うるさいわねっ!私だって緊張しているのよッ!」
「そ、そうか……」
美玖の攻撃的な態度から塩らしい雰囲気に驚きながらも訊ねると逆キレされるかのように言い返されたので少し苛立ちを覚えるが辰馬は自身の感情を抑えた。冷静にならなければ状況を打開する活路を見いだせないのだから。
「えっとね……わ、私と付き合いなさい!」
「……そんなことでいいのか?」
「ハァ、アンタ、この私が告白したのよ!?どれだけ緊張したか、アンタに分かるのかしら?」
「……悪かったよ」
「その性格も私がしっかりと去勢してあげるわよ。でも慈悲深い私は、哀れな彼氏君にズリネタを提供してあげるわね」
「ありがとうございます……」
「でも私だけ脱ぐのは不公平ね。アンタ制服脱ぎなさいよ」
「……あぁ。でも、流石に学校じゃ不味くないか?誰にも見られない場所とかの方がいいと思うぞ」
「なら私のマンションでアンタの裸を見せなさい!」
「分かったよ……それよりも、まさかマンションを購入しているのか?」
「もちろん、そうよ。当然でしょう?」
女優業で大成功を治めている美玖にとって、マンション購入することなど当然なのだろう。馬鹿な質問でもしたかのような口調で返答される。今まで辰馬が淡い恋をしていた清楚で可憐な斎藤美玖の姿は微塵も無かった。それでも容姿が美しすぎるから、そんな攻撃的な雰囲気も妙に様になっていた。
「そうですか……俺は築年数が半世紀近くの安物件ですよ」
「ふ~ん、随分と寂しい生活しているのね。そんなところに茜も住まわされているなんて可哀想ね」
「そうだな……じゃあ、そろそろ俺は戻っていいか?」
「ハァ?ダメに決まっているでしょう!」
「な、何でだ……」
「せっかく付き合ったんだからキスの一つくらいしなさい」
「ああ、分かった」
(ここだッ!今この場所でしか逆転の一手は無いッ!)
勝ち誇ったような笑みを浮かべながら辰馬を自身の私物かのように命令してくる美玖は、付き合えたと思い込んでおり完全に油断していた。そして辰馬にとって最高の好機が訪れる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます