第30話 エロ供養選別地獄編
その日、和尚に呼び出された蓮は、本堂の裏――供養庫と呼ばれる古びた江戸風倉庫、いわゆる土倉の前に立っていた。
和尚「よいか蓮。ここはな、世にあふれる“エロ本・エログッズ・アレなDVD”を、ありがた~く供養する聖なる場所……エロ土蔵じゃ!」
蓮「はい(エロ土蔵って…)」
和尚「だが、全部を燃やすわけにはいかん。善性と悪性、供養の対象か、ただの業か――選別せねばならぬ。そう、これは試練……」
蓮「つまり俺、これから“エロ品の仕分け作業”を?」
和尚「左様。通称、“エロ供養選別地獄”じゃ!」
ギィィ……と音を立てて倉の戸が開くと、そこには――
踏み固められた土の床の上にビニールシートが敷かれ、その上には山積みの段ボール箱があった。
中には、いかがわしい雑誌、DVD、抱き枕、女体型加湿器、変な形のキャンドル、よく分からない石像などがごちゃ混ぜに詰まっていた。
蓮「……寺でやることじゃねえ!!!」
和尚「何を言う! 人の煩悩を救うにはまず、煩悩を見つめねばならん!」
蓮「見つめすぎて心が死ぬわ!」
そこに現れるスミレ。
スミレ「お茶持ってきたよ……って、うわぁ」
蓮「スミレ、見るな! 来るな! これは男子の地獄だから!」
スミレ(顔真っ赤)「でも……気になる……」
蓮「ダメです!」
そこへまた登場するタコツヒメ(触手を八本すべて器用に使いながら)
蛸津比売命「整理手伝うデース!分類ラベルも作ってマス。“懺悔系”、“夢破れ系”、“過激派系”、“年代物”、“感謝すべき芸術”!」
蓮「分類細かすぎィィィ!!」
――地獄の始まりだった。
~数時間後~
蓮「はぁっ……はぁっ……なんだこれ……自分の煩悩と向き合わされる感じ……精神にくる……」
寧々子「ていうか、これ供養ってより『妖怪化しそうなグッズの隔離作業』だよな」
和尚「実際、勝手にしゃべり出す抱き枕とかあったからの」
蓮「!?」
蛸ヒメ「“淫乱ピンク髪娘抱き枕”、いまは御札貼って封印中デス♡」
スミレ「私、蓮くんがんばってると思う……でも心が壊れないようにだけ、気をつけてね……!」
蓮「もう壊れかけてるよ……! この寺、まともな仕事ないのか!?」
和尚「“煩悩”とは向き合うものじゃ……エロ地獄の底でも、笑って生きよ、蓮……ふぉっふぉっふぉ……」
蓮(選別作業中)
「これって……昭和のエロ本? 時代を感じるなあ……」
蓮が何気なく手に取ったその本、題名はこうだった――
『七つの秘孔でイカされて ~地獄編~』(※霊力警戒値:高)
和尚「おお、それは“イカされ地獄シリーズ”の初期作品……! 危ない、蓮、開いてはならん! その本は――」
蓮「えっ」
パラッ、蓮がその本を開くと……
ビィィィッ!!供養庫内に強烈な紫の霊気が渦巻く!
和尚「遅かったかァッ!!!」
中から現れたのは――
七穴(ななけつ)女郎と呼ばれる、セクシーな裸体に七つの怪異穴を持つ妖怪女郎。
七穴女郎「供養とは……私を葬るということかしら? ならば、味わってもらおう。七つの煩悩地獄を……♥」
和尚「怪異穴で肝心なところは隠れておるのう、レーティング対策ばっちりじゃ」
蓮「穴っていうか宙に浮かんだ黒丸ですよね!!」
――戦闘(?)開始
和尚「蓮よ! これは試練じゃ! エロの業を超えるには、その業と向き合わねばならぬ!」
蓮「向き合い方が特異すぎるんだよ!!」
七穴女郎の「視姦地獄(しかんじごく)」発動――
妖しく光る眼で蓮の煩悩を視る!
七穴女郎「見えた……“スミレの裸エプロン”……“タコヒメのギリギリ水着”…フフ、可愛い煩悩ね……♥」
蓮「やめろぉぉぉおおおお!!」
和尚「蓮、地霊としての力を使え!念じるのじゃ!泥に沈めと!」
「えええ!?えっと『沈め!』」
七穴女郎の足元の土が突如畑のようにふかふかの掘り返された土に変わる。
「なっ!なにいっ!いやーん!」
七穴女郎が土に足を取られ尻もちをつく。丁寧にM字開脚で。もちろん危険な部分は黒い穴(墨塗りにしか見えない)で隠されている。
和尚「蓮、これだ!煩悩寺秘蔵アイテム・ありがたや六尺棒!」(御札のついた木棒を手渡す)
「最初からくれよ!殴ればいいんだな?!」
和尚「なにを言うか!突き刺すに決まっておろう!下腹の穴を狙え!」
「使い方が地味にエロい!」
蓮が『ありがたや六尺棒』を七穴女郎の下腹部の穴(墨塗り)に勢い良く突き刺すと!
パァァァァァァン!
七穴女郎は音とともに四散消滅した
妖怪、浄化。
エロ供養庫には再び静けさが戻った。
和尚、感慨深げに手を合わせる。
「……ワシには聞こえたぞ」
蓮「え?」
和尚「成仏の瞬間、『逝くうぅぅぅぅぅぅ!』と叫んでおったわ……」
蓮「やめい!! なんでそんな声で逝くんだよ!? 供養される気ゼロじゃねーか!!」
和尚「ふふ、彼女なりの美しい昇天だったのであろう。」
蓮「もう和尚は黙ってて!!」
そこに現れた、ラスプーチン「こっちにある除霊済みの拘束具セット、貰って行っていいかね?」
「帰れ!アンタに触らせたらまた妖怪化するわ!」
エロ供養修行(?)を戦い抜いた数日後、煩悩寺の裏庭。蓮は静かに精神を集中していた
蓮:「……よしっ!」
全身に力を込めると、地面がぬるりと動き、彼の両脚が足首程までズブズブと土に沈んでく。
和尚「よし、そこであのセリフじゃ!」
蓮:「田を返せぇぇぇっ!!」
ズボボボッ!!
地面が一帯で盛り上がり、土がひっくり返されて耕された状態になる。まるで目に見えぬ大鍬が通ったかのように。
蓮:「すげぇ……俺、こんなこともできるんだ!」
嬉しに顔を輝かせる蓮。その顔はもう、泥田坊ではなく、自信に満ちた若き地霊の顔だった。
和尚「いったじゃろう。『田を返せ』これは、すなわち“田を
蓮:「取られた土地を返せって訴えてるわけじゃなかったんですね」
和尚:「うむ。怨霊のセリフと思われがちじゃが、もともとは真面目な農耕神の掛け声だったのじゃ。この力を磨けばおぬしも立派な田神にも土神にもなれるぞい」
蓮:「はいっ!」
和尚:「エロ供養煩悩修行のお陰じゃな。」
蓮「認めたくない……」
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